最終話 輪廻
神殿にはいると、一匹のヒーローカオスチャオがいた。
そして、もう一匹、ヒーローチャオがいる。
あのヒーローチャオは、もしかして…。
「あらま、結局来ちゃったのね、チャオベエ。」
「おまえ、もしかして…。」
「そうよ?あなた達に探してと依頼されているチャオ。
分かるでしょ。成り行きで。」
「…戻る気は?」
「無いわよ。当たり前じゃない。
あなたの性格は「失敗作」だったし。
それに、元々私に飼い主なんて存在しなかったのよ」
…は?
失敗作…?
存在しなかった…?
「今までの人間達も、みんなそう。
あなた達を助けた人間も、襲った人間も、
全部、このヒーローカオス―レイが作ったモノなのよ?」
「…理由は?」
「ん?」
「何でそんなモノを作った?」
「あなたは、私の作ったゲームだから。」
「?」
「分からないなら…近づいてみなさい。」
ヒーローカオスはにやりとしながら、
チャオベエをこっちに来るよう手招きをする。
しかし、彼の足は途中で止まった。
いや、止められた。
透明な壁が、多分目の前にはあるのだろう。
チャオベエは叩いた。しかし、壊れない。
蹴った。壊れない。
ヒーローチャオは甲高く笑って言った。
「あなたはプログラムなの。
そして、私たちが居る所こそ、現世。
そちらはプログラムで出来た、私たちの世界。
レイは神でも何でもないの、
こっちではただの…ゲームプログラマー、
そして、私は脚本家なのよ。」
チャオベエはいまいち話が飲み込めずに二人を見た。
しかし、二人は何も言わず、
やはり笑いながら、
赤のボタンを、ぽちっと、押した。
刹那、チャオベエの目の前は真っ暗になり、
そのまま戻ることはなかった。
…。
「デリート、と。」
「レイ、やっぱり、私たちのゲーム、
「聖誕祭冒険」の主役は真面目路線で行こうか?
名前も「チャオヘイ」にしてみたりさ。」
ヒーローチャオは笑いながら、
PCを打つレイに話しかけていた。
その画面には「DELETE」と書かれている。
「…ま、あなたの言うとおり、
怠惰キャラのAIで主役にしたら、
ろくなモノにならなかったしね。」
「そうでしょ!」
「じゃ、また、新しいモノで…。」
蛍光灯の下、
二匹のチャオはまた、
彼女たちのゲームの世界に一匹のチャオを作った。
二人はやはりにやにやして、「彼」をみた。
まだ、「飼い主」のプログラムの家で寝ているようだ。
チャオベエの時も、スタートはここからだった。
「さてと、後はこの男のAIのPCにあの文を打つだけ。」
「次はうまくいくと良いね、レイ。」
「えぇ、どうせなら私たち好みのストーリーにしないとね。」
レイは「あの文」をかちかちと打つ、
そして、パンと叩いて、送信した。
……。
「うちのチャオしりませんか?」
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