「9章」 125話 『総帥の最期』

◆前回までのあらすじ
 死にかけのヴォルストを自分の研究室まで運ぶブレイン
 そして息絶え絶えするヴォルストに対し、
 ブレインは自分の毒魔法をヴォルストの深傷に与えるのであった。
 
◆タイトル
 125話 『総帥の最期』

◆本題


 「このまま永遠に眠れ。」


 予想外の行動だった。
 ヴォルストの側近であった彼は
 息絶え絶えするヴォルストに対し、追い打ちをかけたのであった。
 そう、裏切りである。


 「貴様....なぜ....」


 最後にヴォルストはブレインを見詰め、静かに息を引き取った。
 深い傷から全身に毒がまわりヴォルストの体は真っ青となる。
 そしてそのまま硬直し、抜け殻と化した。


 「DN帝国を統制できなくなったお前の役目は終わりだ。」


 ブレインは抜け殻と化したヴォルストを粗末にベッドから振り落とし、床に転がす。
 ブレインには密かな野望があった。
 ジェノム0を利用し、自分の力により世界を征服することを。
 ジェノム0を使いこなせば世界はたやすく支配できることを。
 
 ジェノム0が完成した時にブレインは確信していたのだ。
 最後のシナリオはヴォルストを殺害し自分が世界を支配できるチャオになることである。
 それまではヴォルストを利用し、世界をDN帝国で統一してもらう予定だった。
 しかし、ヴォルストが死んだ今、この後はDN帝国はそのまま崩壊へ向かうだろう。
 
 予想外のできごとだ。
 本来であれば、ジェノム0により全てを崩壊できる予定だったからだ。
 それが今は女神により総帥も死去し、ジェノム0も自爆攻撃により多数無駄な破壊となってしまった。
 
 側近に裏切られ命を失った総帥。
 総帥が死去したことを皆が知るのは、まだ先のことである...。


 「さて、シナリオ変更だ。まずはこの戦況を回避しなくては。」


 ジェノム0に対し、ブレインは命令を出した。
 命令の内容は「ただちに、戦闘をやめ『ある場所』へ向かうことである」
 命令を遠隔で聞いたジェノム0は次々と戦闘をやめた。
 これにより、優勢であったDN帝国側の戦況がくつがえる。
 ジェノム0の攻撃を受けていた世界政府や支援した国の飛空艇が次々とDN帝国に降り立つことができ、
 DN帝国兵とまともに地上戦で戦えるようになっていく。
 
 DN帝国内部でも『ヴォルストが女神にやられた』情報が徐々にはいっていった。
 しかし、これが正しい情報であるか嘘であるかは戦闘中のため
 確認する術がない。よって地上戦ではDN帝国兵は変わりなく戦いを続けていた。
 
 ブレインはあえて、幹部含め全DN帝国兵に対して総帥が死にジェノム0が撤退する旨を伝えなかった。
 ブレインからすれば他のDN帝国のチャオは駒のようなもの。
 理想は全てボロボロになった後、再度ジェノム0を出動し追い打ちをかけるシナリオを考えているのだ。


 -----DN帝国本部 大会議室-----


 「いったいどうなっているんだ...!!」


 幹部の一人であるドイルがDN帝国本部の会議室へ戻った。
 ジェノム0の突然の撤退に焦りはじめている。
 そこにはブレインを除く他の幹部たちも集結していた。


 126話へ続く。

このページについて
掲載日
2021年6月29日
ページ番号
308 / 310
この作品について
タイトル
真実の冒険
作者
土星(サターン)
初回掲載
週刊チャオ第107号
最終掲載
2021年6月29日
連載期間
約17年3ヵ月12日