４

―・・・あ、ソゥ・・・。
―大丈夫なのか？まだ話せるのか？
―・・・もう・・・私・・・でも、・・・

俺はその後のリィの言葉を繋げていった。

でも、私最後にソゥに言いたいことがあるの。
私は元々捨てられた子供だったの。
でもね、あなたみたいなギタリストに育てられてここまでこられた。
この病気は・・・そう、親の遺伝の病気。
親の顔は全然知らないけど、遺伝だからしょうがないの。
私はもうあきらめていた、いつか来ると思っていたから。
へへ・・・でもね、ソゥは意地悪だった。
だって、私まだ生きたいと思わせるの。ソゥを見ているとそう思った。
悔しい。
悔しいよ。
まだ死にたくないよ。
また、キーボード弾きたいのに、ソゥと演奏したいのに、
・・・悔しい。
もう無理なのよ・・・私・・・もう・・・死ぬの・・・。

俺は呆然と立ちつくした。自分を責めた。
そして、悪魔にたいして、こう問いかけた。

俺に後悔を残させないためだけに
おまえが―悪魔が来るはずがない。
何を俺から奪おうとした？
教えてくれ。

と。

―先生。俺の血を採ってください。

俺はこれまでのいきさつを先生に言った。
事故のこと、黒くなってしまった自分の身体のこと。
本当はヒーローチャオだということ。そして、血が中性であること。
先生は意気揚々と早速俺を手術室にリィと連れて行った。
リィは黙って俺を見ていた。
そして、麻酔で眠ってしまった。

俺は以外に早い血の接種だけを終わらせて、
待合い廊下で待っていた。
すると、いつかのおっさんが来た。ダンナだ。

―おまえに残された時間は後わずかだ。
　おまえの心は・・・どうなんだろうな。あえておまえの素行調査はしていない。
　ところで、こんなところで何をしているんだい？
―おまえには分からないさ・・・。
―そうか・・・ヤケを起こしてはいなさそうだけどなぁ。
―当たり前だろーが。

その時、手術室からリィが出てきた。先生はマスクをはずして俺にいった。

―手術は成功だよ。君の勇気が彼女を救ったんだ。

俺はうれしいような悲しいような表情をした。
リィはあのとき俺の真実を聞いて黙りこくった。ショックだったろうな。
そして、俺が犯罪を犯して、ムショに行くことも言わなければならない。

病室で俺とリィと二人だった。先生達は外に行ってしまった。
リィは目を覚ます。

―・・・私、生きているんだね。
―そうだよ・・・そして、もうお別れだ。
―・・・そう。分かってる。さっきあの人間のおじさんとの会話、聞こえたから。
　手術後目が覚めたけど、寝たふりをしていたの。
―俺のこと、最低だと思っているか？・・・思っているよな。

しかし、リィは無言で少し笑いながら首を振った。

俺は笑って空を仰いだ。そして、病室を出て、
あのときのアパートの前の笑顔で、おっさんに話しかけた。

―さぁ、行きましょうか、・・・ダンナ。

すると、彼は変な機械を俺の頭に当てて、しばらくした後それをはずして、
何かを言おうとした瞬間、彼の携帯が鳴った。

―え？強盗事件？はい、今行きます！

そして、彼は俺にこう言った。

―・・・君にダンナと呼ばれるのはまだまだ先のようだな。
―はぁ？いったいどういう・・・。

しかし、ダンナは少し笑顔で舌打ちした後、
さっさと病院を去ってしまった。
病室にもどり、俺はリィに寄り添って窓を見た。

―・・・ふう、ずいぶんと結構な恩赦だ。

手が届きそうな星から、真っ白な雪がこぼれ落ちてきた。

Fin