『愛藍傘』 片思いは何を語るだろう。
ランナーは走った。
走った、走って、走った。
でも、ゴールは結局見えなかった。
―ゴールがないんですよ。そのマラソンは。
男が雨で濡れた服をそのままにして、
いすに座っていた。
―ねぇ、マスター、ゴールするためにはまだ走るんでしょうか。
ダーカは穏やかに言った。
―貴方がゴールを信じる限り、ですかね。
男はふうと息を吐いた。
―とは言っても。信じれなくなってきているんですよ。
―・・・そうですか?貴方はまだいけると思っている。
―いや、無理だと思うんだ。うん。
―疲れたのですか?
―いや、足は全然疲れないさ。
足は疲れないからということからして、
男は何かしら、signを送っているように見えた。
ダーカは、あぁ、そういうことかと理解して、
ごそごそとドロップを取り出してきた。
―あ・・・藍色?
―ブルーベリー味ですよ。まぁ、名前は愛藍傘って言うんです。
―・・・マスター、何故僕の「マラソン」を見破られたんですか?
ダーカは普通に長年の勘、と言おうとしたが、やっぱり止めて、
数分間が得た後、こういった。
―今の私のゴールは目の前の人を満足させることですから。
終わり。