[stairway to heaven]

俺はしばらく走った。
勢いよく走り出したのは、
彼女が気が変わらないようにするためである。

「きっと…行くから。」

俺はさっきの言葉を口ずさんだ。
でも、よく考えれば、何であの言葉で納得したのだろう。
いや、それ以上に、
彼女は何であそこまで抵抗したのか?

俺はしばらく考えていたが、
ある一つの言葉にたどり着いた。

「俺のことを…好きだった?」

俺は少し胸が高鳴った、同時に、
目の前の道がすごく暗い小道になった気分になった。
俺はほとぼりが冷めるまで、1人だ、…独りだ。

俺は彼女との事を思い出していた。

いつも隣で、何か話していた。
いつも隣で、アイスクリームをかじっていた。
いつも隣で、強盗も、手伝ってくれていた。

強盗も…?

『監視カメラ!』

いつも隣に…?



しまった、と俺は思った。
そして、俺はあわててバイクをUターンさせて、
彼女を置いていったバス停に向かって走り出した。


>atasi視点

私はしばらく、道上で座り込んでいた。
後ろに広がる街には行きたくなかった。
なにか、まだ希望があるような気がして、
道を来るバイクを一つ一つ見ていた。

と、突然、白いバイクが沢山列を連ねて、
私の前を通ろうとした。

「警察の…。」

私がそう思った瞬間、


>ore視点&atasi視点


銃声が、響いた。


>ore視点


「…。」

俺は無言で泣いた。
撃たれた、きっと彼女は撃たれた。

そうだ、俺はバカだった。

俺が監視カメラで見られているなら、
当然、
彼女も監視カメラに写っているはずなのだ。

そして、警察は俺たちを殺す気で捜している。
…全てが今の銃声に当てはまった。

俺は、警察が通り過ぎて、俺を捜しにいっているすきに、
彼女の前にバイクを止めた。

「あ…。」

彼女は道で倒れていた。
胸を撃たれている。
もう…間に合わない…。
俺はあわてて駆け寄った。

「ぁ…。来てくれたんだ。」
「ごめんな…俺がもうちょっと考えていれば…。」
「いいの…楽しかったよ。この生活。」
「…。」
「今更だけど…私…。」

彼女は小さい手を必死に伸ばして、
身動きが出来ない俺の腕を、
きゅっと…掴んだ。
そして、俺の胸に顔を持ってきて、
ふわりと俺を包んだ。

「好き。」

俺はもうなんとも言えなかった。
俺も迷わず、

「俺も…。」
「本当に?」
「本当だよ。嘘なんてつかない。」
「ほんとうに…ほんと?」
「あぁ…」
「ぅん…うれしい…。」

彼女はまた俺の服をきゅっと掴んだ。
嬉しそうな顔で、しばらくその体制でいたが、
やがて、すっと彼女の力が抜けた。

「…。」

俺は無言で彼女を抱いていた。

……。

このあと、俺が進むべき道は、ただ一つ。

……。

後ろから、警察のバイク特有のエンジン音がする。

……。

俺は後ろを見て、

……。

まるで誘うように、彼らに向かって、手を挙げた。



銃声がまた、一つ、道に響いた。



……。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第301号&チャオ生誕9周年記念号
ページ番号
8 / 9
この作品について
タイトル
Mr.Beloved 2
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第301号&チャオ生誕9周年記念号