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>atasi視点

私は、一つの銀行に目をつけた。
木造で、ガラスの扉。
どこをどう見ても、古い銀行だ。

私は監視カメラはないと、確信した。
私は彼を手招きする。
彼はいつものようにライフル銃を持っていた。
そして、黒いマスクも…あれ?

「監視カメラは無いけど…大丈夫。」
「あぁ、マスクが無くても今回は行けるだろう。
 …無いんだろ?カメラ。」
「うん…。」

彼は私を連れて、
勢いよく、そのドアを開けた。

……。

「ひっ…。」
「金を払え、それだけをしろ。」

彼はライフル銃を銀行員の男に当てる。
男は最初はびくびくとしていた。
私はそれを彼の隣からじっと見ていた。
…しかし、どうにもいつもとは違う。

「おまえ、…何故笑い出す!」

彼は怒って男を見た。
そう、男は金を払うどころか、
笑って私たち二人を見ていたのである。

男は無言で、
自分の胸元にある、
一つのボールペンを指さした。

ジー…と、何かが動いている。

私ははっとした。

そして、あわてて、

「監視カメラ!」

と、叫んだ。
男は、自前で小さな監視カメラを仕込んでいたのである。


>ore視点

俺は、彼女の叫びを聞いて、
刹那に、彼女を抱きかかえて、
その銀行を出た。

3分後には、警察が来る。

「…おまえ…。」

俺は彼女を見る。
監視カメラをあんな所に隠されたらどうしようもないが、
でも、俺は彼女を責めたかった。

それは彼女が好きでも、どうしようもないと言う、
そんな葛藤も混じっていたのかもしれない。

彼女は、何も言わず、何も言わず、何も言わず…
ただ、うつむいていた。
そして、ふいに俺の腕をぎゅっと掴んできた。


>atasi視点

ダメだ、もう、私…ダメだ…。

私は必死の思いを持って、彼の腕を掴んだ。
掴んで、伝えたかった。

私を突き放さないで…と。
私の気持ちに、気づいて…と。

監視カメラを見逃したのは、私の責任だ。
もう他に、誰にも責任をなすることは出来ない。
でも、…私は離れたくなかった。
彼と離れる生活なんて…生活なんて…。


>ore視点

バイクに乗った後、俺はこれからどうするかを考えた。
責めるなんて、未来を何にも考えていない。
いまから、どうするか、それが大切なのだ。

そして、そこで、一つの事実が突きつけられた。

…俺は自分の顔を見られた。

その感情が一番最初に飛び出してきた。
いや、それはあるいは、
理性だった。

俺は無言でうつむく彼女を後ろに乗せて、
ハーレーをまた、走らせた。

…もうすぐ、このハーレーのソフトクリームの痕も、
雨に濡れて、消えるだろう。

俺は誰もいないことを確認して、
一つのバス停の前で、彼女をおろした。
バス停の周りはただただ、暖かそうな街が見えていた。
ここには…来たことがない。

「お前は…。」

俺は口を開いた。

「お前は…もう、ここでお別れだ。」
「…!?」

彼女は嫌がった。
俺の腕をぐっと掴んで、顔をそこに押しつけた。
俺は彼女を連れて行きたかった…が、
顔を見られたのだ。
俺は顔を見られてしまったのだ。

「悪い…お前を責めている訳じゃない…。」
「いや…いや…。」
「ダメだ…俺は顔を見られたんだ。
 お前は、俺といてはいけないんだ。」
「いや……。」

彼女は渾身の力で、俺の腕を掴む。

「…はなしてくれ…」
「いや…いや…」
「…また、俺の顔が忘れられたら、ここに来る。」
「いや…」
「きっと来る。きっと…来るから…。」

俺は、その手をそっと放して、
勢いよく、ハーレーを走らせた。
後ろから、声は聞こえてこない。

サイドミラーには、
彼女のへたり込む姿があるだけ…

このページについて
掲載号
週刊チャオ第301号&チャオ生誕9周年記念号
ページ番号
7 / 9
この作品について
タイトル
Mr.Beloved 2
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第301号&チャオ生誕9周年記念号