[somehow,two invisible goals are ...]
私は、あの後考えに考えた。
どうしよう?
素直に「楽しい」とか伝えればいいのかな?
でも、今更言ったって、フォローとしか思われないだろうし、
それに、私の気持ちに気づかれて…。
悩みに悩んだ。
強盗の時も雑念は払うはずだったのに、
何かくすぶり続けているものがあるまま臨んでしまった。
強盗の仕事に手が着かない。
…普通の人にとっては「それで良い」のかもしれないが、
彼とその仕事をしている限り…それじゃだめなのだ。
でも、あのことを、あの最初で最後の「打撃」を、
与えてしまったことをどう取り戻そうか、
結局…答えは見つからなかった。
そして、それが、…
>ore視点
3日後。
俺はまだ、彼女の言ったことを考えていた。
「…楽しくないのか。」
元々は、金持ちと組んで資金が欲しかった。
というのが、大方あいつを引っこ抜いた理由だった。
ハーレーも、あいつより優遇していたハーレーも、
彼女の銀行の資金で買ったものだった。
「俺は…」
よく考えてみると、たまに悲しい顔をしたり、
寂しそうにどこかを向いているときがあったような気がする。
マスターはあんな事を言ってくれたが、
彼女はきっと…。
「あいつのことが…?」
でも、そう考えればそう考えるほど、
俺は何故だか悲しさが伝染したような感じがした。
強盗という仕事にうつつを抜かしている間に、
俺はまた別の感情を、別の感情を…。
あぁ、そうか。
俺はあいつのことが好きなのか。
俺はハーレーの速度を上げる。
風を浴びて、少し火照っている体を冷やしたかった。
後ろに乗っている「暖かさ」が、
だんだんと、「熱く」感じてきた。
強盗という仕事をしている。
しているのは分かっている。
でも、どうしようもないのだ。
こんな仕事をしているくせに、
感情的になってしまうものを取り除けないのだ。
無理だ。
…俺は結局ルート64を走り抜いて、
一つの小さな街にたどり着いた。
いまから、仕事だ。
こんな事を考えてはいけない。
「…ねぇ、どうしたの?」
「!?」
「…え?ちょっと、そんなビックリすること無いじゃない。」
「…あぁ、そうだな。」
彼女は俺を下から見上げるように見た。
可愛い顔、身体、…。
ダメだ。もうどうしようもない。
俺はさっさと強盗から身をひいて、
普通の生活を始めたいと思った。
そして、彼女と知らない街の裏側で、
ひっそりと暮らしていきたいと思った。
そう思ったが…。
「今から、強盗を始めるんでしょ?」
そう。
いまから、確かにまた俺たちは強盗を始める。
そしてこの「仕事」こそが、つながり、
全く違うベクトルを歩んできた二人の、
唯一の接点。
俺は肩を落として、
彼女の方向を見た。
「…監視カメラがないか、確認してきてくれ。」