特別編「太陽の、下で」・前編
それは、神楽坂ペアと川島ペアが魔術界に現れる、少し前の話。
魔術高校の、1年の教室。
【木更津】「ち、遅刻しちゃう~っ!」
【ヴァレイユ】「まったく、何やってるのよ!」
慌てて教室に飛び込んだのは、ご存知木更津香織とヴァレイユ=セルフィーのペア。
・・・しかし。
【女友達】「香織・・・今日は特別日程で授業開始が30分遅れるって、聞いてなかったの?」
【木更津】「・・・あ。」
ええ、「ド忘れ」です。
魔術師狂想曲(マジシャン・ラプソディ)・特別編「太陽の、下で」
木更津に日程変更を教えたのが、クラスメートで親友の山吹綾乃(やまぶき・あやの)。
パートナーはライラ=クローロ、両者共に光使いです。
魔力は学年随一で、将来はあの永川慶十郎たち「四天王」クラスになるんじゃないか、とも一部では噂されています。
【木更津】「綾乃・・・ごめん・・・」
【山吹】「ま、遅刻してないだけいっか。」
【ライラ】「ヴァレイユは気づかなかったの?」
【ヴァレイユ】「あたしもすっかり忘れてたわ。なんか、あたしまでおとぼけキャラになってくる・・・」
・・・パートナーとは、時に恐ろしいものであります。
とにかく、着席。
【木更津】「・・・でも、何しよう。」
確かに、30分、何をしましょうか。
すると、隣の席の男子、中谷隆之(なかたに・たかゆき)が話しかけてきました。
【中谷】「なぁ、お前・・・どうしたらそこまでボケられるんだ?」
・・・その質問はどうなんでしょう。すかさず木更津が反撃します。
【木更津】「あたしだって、ボケたくてボケてる訳じゃないんだから!」
【中谷】「いや、そりゃ分かってるんだけどさ。
・・・それで戦ったらオレよか強いんだからなぁ・・・世の中どうなってるんだか。」
【木更津】「そんなコトないって、絶対あたしが負けるって!」
さらにそこに、中谷の友達である水口智彦(みなくち・ともひこ)が。
【水口】「よぉ、中谷。お前、あんまり喋ってるとボケ移るんじゃねぇのか?」
【木更津】「ちょっと、どういう意味!?」
さすがに怒ります。
【水口】「おっと、悪ぃ悪ぃ。コイツとは戦いたくはねぇし。」
と、こんな調子の水口ですら木更津とのバトルを恐れる程です。
実際は中谷も水口もかなりの実力者ですが、木更津は彼らに魔力で劣りながらほぼ互角の戦いを演じることができるのです。
【中谷】「ボケについては心配するな。入学からずっと隣だけど大丈夫だから、移んないんじゃねぇのか?」
【水口】「なるほど。」
ヴァレイユのところにも、中谷のパートナーであるグレット=カルッスス、水口のパートナーであるギステア=ブールズが。
【ヴァレイユ】「・・・香織と違って、あたしいじってもつまらないわよ?」
【グレット】「いじるって、芸人かよ・・・」
【ギステア】「ま、こっちは平和に行こうじゃないか。」
・・・こんな調子だと、30分は速いものです。気がつけば、先生が教室にいました。
さて、そんな調子で、夕方。
中谷ペアと水口ペアが、街を歩いています。
【中谷】「さて、今日はどうする?」
【水口】「そうだな、まずは・・・ん?」
【ギステア】「どした?」
【中谷】「あれって、まさか・・・」
【グレット】「っぽいな・・・」
彼らが目にしたのは、この街の不良集団。
【水口】「あいつらも暇だな・・・」
【中谷】「ま、触らぬ神に祟り無し、ってとこか。」
【水口】「全くだ。」
はい、その通りです。触らなければどうという事はありません。
・・・ただし、触ったら別です。
連中の一人と、水口の肩がぶつかってしまったのです。
【不良A】「ケンカ売ってんのか!?」
【水口】「くっ・・・」
隣で、中谷ペアが相談します。
【中谷】「やばいな・・・」
【グレット】「どうする?・・・魔術師2組なら、逃げるくらいはできそうだが・・・」
【中谷】「確かに。・・・だが、それもなぁ・・・」
【グレット】「・・・ん?・・・おい、隆之。」
【中谷】「どした?」
グレットが、何かを見つけました。
【グレット】「あそこにいるのは・・・」
【中谷】「・・・成るほど・・・これで、面白い事ができそうだ・・・」
中谷が、ニヤリと笑いました。
・・・彼らの目線の先にいたのは、この2組。
【木更津】「ふーっ、いい天気。」
【山吹】「そういえば、最近雨降ってないわね・・・ん?」
山吹も、そちらに気づきました。
中谷はまず、水口に合図を送ります。次の瞬間、水口はさっと飛び退き、中谷の隣へ。
【不良A】「!?」
【中谷】「相手が悪かったな・・・オレ達は魔術師でね・・・」
闇属性の中谷が剣を作りました。
【ライラ】「あれって・・・」
【山吹】「水口に中谷、連中と何やってるの!?」
【ヴァレイユ】「ん?グレット、こっちに合図してない?」
見ると、グレットがこちらに向けて腕で合図をしています。
【木更津】「どういうコト?」
【山吹】「まさか・・・連中とやろうってつもりか・・・面白いじゃない・・・
いくわよ香織!」
【木更津】「へ?」
山吹はいきなり木更津の手をとり、走り出しました。
<中編に続く>