最終話「いつか、君の為に」・中編
最終話・中編
2組が魔術界から戻った、その日の夕方。
高校から家までの道を、2組で帰っています。
【川島】「はぁ、なんかこっちに来て疲れが一気に出たわ・・・早く帰って寝たい・・・」
【神楽坂】「同じく・・・」
【神楽坂】「そういえば、川島さん・・・」
神楽坂が、何か質問しようとしました。しかし。
【川島】「ん、ちょっと待って!今何て言った?」
【神楽坂】「え?そういえば、川島さん、って・・・」
訳も分からず答える神楽坂。
【川島】「それよ、それ!
あたしら、一応10年以上の腐れ縁よ?
なのに『川島さん』って他人行儀!」
【神楽坂】「でも、他にどう言えば・・・」
神楽坂も正直、どうすればいいのか困ってます。まさか呼び方で何か言われるとは思ってませんでしたから。
【川島】「下で呼んで。っていうか、呼べ。」
いきなり命令。
【神楽坂】「ええっ!?」
【川島】「・・・あたしも、今まで『神楽坂』って名字で呼び捨てにしてたの、謝るからさ。」
【神楽坂】「は、はぁ・・・」
突然そんな事言われても、やはり今までずっと呼んでいた呼び名を変えるのは多少抵抗があるものです。
しばらく黙った後、ようやく、
【神楽坂】「涼子さん、で、いいですか・・・?」
【川島】「うーん・・・ま、いっか。
ありがと、啓。」
【神楽坂】「はぁ・・・」
(やっぱ呼び捨てなのか・・・)
まぁ、そこは、ね。
【神楽坂】「でも・・・なんでいきなりそんな事を?」
【川島】「あっちで旅をしてた時、ふと昔のことを思い出してね・・・
小さい頃は普通に『啓くん』『涼子ちゃん』って呼び合ってたのに、いつから他人行儀になったんだろ、って思って。」
というより、普通大きくなったら他人行儀になるものなのでは。
【川島】「正直、このまま大人になって、他人になっていくのかな、って思ってたし、それでもいいや、とも思ってた。
でも、それってやっぱり寂しすぎる。魔術界に行って、そう思えるようになった。」
【神楽坂】「・・・・・」
【川島】「これからどうなるか分からないけど、ずっとこういう仲でいたいよね・・・
付き合えとか、結婚しろとか言われても絶対に嫌だけど。」
・・・そこは譲れないんですね。
【神楽坂】「そう、だね・・・」
少しして、神楽坂もゆっくりうなずきました。
【神楽坂】「そういえば、あの時・・・なんで捨て身で森野を?」
神楽坂が聞いたのは、最後の戦い。
【川島】「ああしないと勝てない思ったし、何より・・・」
【神楽坂】「何より?」
【川島】「アンタなら、やってくれると思ったから・・・
他の人なら、あんな事してないわよ・・・ありがたく思いなさい!」
【神楽坂】「え?は、はぁ。」
なんか、多少話がずれてるような気もしないでもないですが。
そのまま、夕日の照らす道を、歩き続けます。
【川島】「そうだ!
久しぶりに・・・手とかつないでみる?」
【神楽坂】「・・・なぁ、俺をおちょくってないか?」
【川島】「あ、バレた?」
さすがの神楽坂も、遊ばれてると感じたのでしょう。
しかし。
川島は神楽坂の左手を奪うように掴み、無理矢理手をつなぎました。
【神楽坂】「はぁ・・・
ところで・・・」
【川島】「ん?」
【神楽坂】「これ、誰かに見られたら確実に勘違いされるんじゃないんですか?」
ただでさえ友達なんかには「らぶらぶ」なものだと勘違いされている2人。担任の岩井先生がなぜか公認してるぐらいです。
そこにつけてこんな場面を写メ辺りで撮られようものなら、フ○イデー並の大スクープです。
【川島】「ヤバ!忘れてた!」
慌てて手を離す川島。
そのまま、道を歩き続けます。
手は離しましたが、視線の先に見えていたものは、1つでした。
【カナル】「・・・なぁ、これって、端から見たら『一歩前進』なんじゃねぇのか?」
【サララ】「さて・・・どうなんでしょう・・・」
その様子を、後ろからついていきながら見ていたパートナーの2匹。
【カナル】「・・・どう思うよ?ナレーションの箕島さん?」
・・・何でカナルにバレてるんでしょう、私。
正直私も、恋愛は永川以外の人とした事がないですし、駆け引きみたいなものもした事ありません。
彼氏がいた身ながらこんなことを言うのはアレですが、恋愛は苦手なんですよねぇ。
これからあの2人がどうなるかなんて、全く分かりませんし。
・・・ごめんなさい、喋りすぎました。
<後編に続く>