第２３話「輝ける、魂よ」・中編

第２３話・中編


【ヴァレイユ】「くっ・・・」
必殺技の撃ち合いで敗れたヴァレイユ。状況は圧倒的に不利です。

【ドルチェ】「スプラッシュクイーン！」
ドルチェがまず一撃。ヴァレイユは何とか避けます。

【ヴァレイユ】「サンダークラッカー！」
【ドルチェ】「そんな、苦し紛れ！」
ドルチェは簡単に避けます。
【ドルチェ】「アクアシュプール！」
そして一撃。ヴァレイユに直撃です。

【ヴァレイユ】「どうすれば・・・！？」
その時、ある「異変」が起こりました。

何と、壁の一部が突然崩れたのです。
元々この地下基地は突貫工事。技術界の技術を使ってるとはいえ、扉の大きさには限界があるので、さすがにあっちから重機を持ってくることはできません。
つまり、実は相当脆いのです。

【ドルチェ】「きゃあっ！」
【ヴァレイユ】「おっと！」
落ちてくる岩を避ける２匹。

・・・しばらくして、壁の崩壊が収まりました。
【ドルチェ】「ふぅ、やっと・・・しまった！？」
ドルチェが気づいた時には、既に遅し。

ヴァレイユが、ドルチェの真後ろにいたのです。
【ヴァレイユ】「クラックストームっ！」
【ドルチェ】「きゃあっ！」
まずドルチェの動きを止めると、真上に回り、
【ヴァレイユ】「ヴォルティック・・・エターナリィっ！！！」
必殺技を叩き込みました。

【ドルチェ】「きゃああっ！」
そのまま地面に叩きつけられたドルチェ。
上からヴァレイユが降りてきて、ドルチェに乗るようにして止まりました。

・・・ヴァレイユの勝ちです。

【ヴァレイユ】「はぁ、はぁ、はぁ・・・勝った・・・」
【ドルチェ】「ごめん・・・ヴァレイユ・・・」
　　　　　　（千佳には悪いけど・・・これで良かったのよね、きっと・・・）



【高野】「ど、ドルチェ！？」
すぐ横で起きた、パートナー・ドルチェの敗北。高野にとって、すぐには受け入れ難い事実。
動揺を隠せません。

【木更津】（ヴァレイユ・・・！）
一方の木更津は勇気１００倍です。どっかで聞いたようなフレーズですが。
【木更津】（千佳は動揺してる・・・殺さずに止めるには、今しかない！）

【高野】「なんで・・・なんでよぉっ！」
高野の瞳から、涙が遂に溢れ出しました。
【木更津】「あたしらより強いとか、弱いとか・・・そういう問題じゃないのよ！」
高野の魔術を剣で払い、魔術を返します。
【木更津】「千佳、もう一度聞くけど・・・あたしと戦ってまで、本当に強くなりたいのっ？
　　　　　　その為には、世界を征服したっていいのっ！？」
【高野】「それは・・・」

【木更津】「千佳は・・・昔の千佳は・・・そんなんじゃなかった！」
【高野】「！」
【木更津】「確かに、ひょっとしたら、あたしのせいかも知れないけれど・・・
　　　　　　けどやっぱ、こんなの間違ってるよ！」

最早、単純な魔術の撃ち合い。
しかし、２人とも、必死でした。

ひょっとしたら、端から見たら滑稽かも知れません。２人して泣きながら戦っているのですから。
でも、少なくとも、当の２人は本気。

【高野】「だから、言ったでしょ・・・もう、戻れないんだって！！」
高野も必死に反論します。ですが。
【木更津】「戻れるよ・・・」
【高野】「？」
【木更津】「戻れるよ、きっと・・・
　　　　　　違う、戻らなきゃ、いけないんだよ・・・！！」
【高野】「戻らなきゃ、いけない・・・」

【木更津】「もう、あたしもよく分からないけど・・・
　　　　　　人間だって、チャオだって・・・一旦道を踏み外したら、ちゃんと戻らなきゃいけない！
　　　　　　そうじゃないの、千佳ぁっ！？」

【高野】「で、でも・・・」
高野が魔術を一撃。木更津はかわします。

【木更津】「だから・・・」
そして、木更津は軽く左右にステップを踏み、高野を撹乱。
普段ならその程度の動きには慣れている高野でしたが、この状況でそんな力は残っていませんでした。


・・・そして、剣を抜き、高野の喉元に突きつけました。

【高野】「！！！」

長年負け続けた木更津香織が、初めて高野千佳を破った瞬間でした。


【木更津】「だから・・・戻ろうよ・・・千佳・・・！」

【高野】「う・・うう・・ああ・・・」
高野はその場で泣き崩れました。もう、言葉になりません。
そのまま涙がポタポタとこぼれ落ち、彼女の泣き声がその場に響きます。

それにつられるように、木更津の目からも涙が落ちました。


こうして、２組の涙で滲んだ戦いも、幕を閉じたのです。

そして、残るは―――

＜後編へ続く＞