第21話「神に届く、希望(のぞみ)」・中編

第21話・中編


【永川】「ぐはぁっ!」
永川は再び壁に叩きつけられ、倒れました。

【戸田】「永川慶十郎・・・この程度か・・・」
【永川】「く・・・くそっ・・・!」

戸田は後ろを向き、歩き始めます。
【戸田】「本来ならすぐに殺したいところだが・・・あいにく用事ができた・・・そこでおとなしく待ってろ・・・」
倒れた永川は、立ち上がることができません。その後姿を、ただ見ているだけです。

【永川】「そんな・・・うっ・・・」


・・・仕方ないですね、ちょっと行ってきます。

え?アンタ誰なのかって?

ふう、今まで男っぽい喋り方で1話から来ましたから、苦労しました。
作者が男ですから、仕方ないんですけどね。

私は、この物語のナレーションを務めさせて頂いている、箕島千紗です。天国から喋ってます。
ちなみに、エストもいたら出してあげたいのですが、あいにく死んでしまって以来、見かけないんです。
彼のことですから、きっと天国のどこかにいるのでしょうけど。

とにかく、技術界の技術覚えるのとか、自分や一応彼氏だった永川のことを中立で喋るのとかも、結構苦労したんですよ?

今までずっと見ているだけでしたが、さすがに彼氏だった人がこうなるとちょっと放っておけないので、現れちゃいますか。
そんなことできるのかって?できるんですよ、これが。ここは天国、なんでもアリなんです。


という訳で、私は幻影になって、永川が倒れている大広間にやってきました。
その光で、彼は気がつきます。
【永川】「・・・ん・・・?」
彼が視線を上げると、当然そこには私がいます。

【永川】「ち・・・千紗・・・!?」
まぁ、驚きますよねぇ。私だったら逃げちゃうかも知れません。

【永川】「僕も・・・死んだのか・・・?」
・・・相当滅入ってますね。私らしくありませんが、一喝しておきましょう。
ついでに言いたいことも、いくつかありますし。

【箕島】「バカなことを!慶十郎があまりにもらしくないから、天国から降りてきてやったのですよ?」
【永川】「らしく、ない・・・か・・・」
【箕島】「あの程度の攻撃で・・・それでも慶十郎?
     私の知ってる慶十郎は、その程度で倒れる人じゃないはずです!」
【永川】「・・・・・」
【箕島】「慶十郎、ひょっとすると、精神的に滅入ってません?
     でなければ、あれ程簡単に・・・」
【永川】「かも知れない・・・寂しかったのかな・・・たぶん・・・」
【箕島】「なんで寂しいのです?由希恵だって朋子だって、牧原くんだっているのに・・・」
【永川】「友達と、恋人じゃ・・・違うんだ、たぶん・・・」
【箕島】「それに、私だって・・・ちゃんと天国から、見てますから・・・」
【永川】「ありがとう・・・千紗・・・」
【箕島】「それと・・・サリアを・・・頼みます・・・」
【永川】「ああ・・・」

あらら、そろそろ限界のようです。私の幻影、半分消えてますね。
まぁ、これをやるのは結構体力使いますし、時間的制限もありますから。

【箕島】「最後に1つ、私は死んでますから、別に他に彼女とか作ってもいいんですよ?
     せっかくだし、由希恵あたりと付き合っちゃえばどうです?」
【永川】「な、なんで僕が・・・って、そもそもなんで最後の一言にそれを・・・」
永川がそう突っ込んだ時には、既に私の姿は消えていました。

うーん、やっぱり最後の一言は別の機会に言うべきでしたか・・・これだけは伝えておきたかったんですが・・・
案外、お似合いだと思うんですけどねぇ?

・・・コホン。
とりあえず、普通にナレーション続けましょう。

彼はゆっくり立ち上がり、歩き出しました。
大広間の出口を出ると、前を歩いている戸田が。
戸田も気配を感じ、振り向きました。
【戸田】「ほう、まだ立てるのか・・・だが!」

と、思った瞬間には、戸田は既に永川の刃の餌食になっていました。

【戸田】「ぐっ・・・はっ・・・何っ・・・!?」
【永川】「貴様は確かに強かった・・・僕がほとんど攻撃しないうちに、魔力を使い果たした・・・
     でも、それが仇になる・・・」
おかげで、永川の魔力はほとんど減っていません。こうなると、勝負は見えていました。

【戸田】「・・・お、おのれ・・・永川あああっ!!」
【永川】「駆けよ銀狼!カイゼル・ジルヴァンヴォルフ!!」

必殺技の一撃で、逆に戸田が吹き飛ばされ、壁に激突。
その衝撃で天井の一部が剥がれ落ち、巨大な塊が戸田を潰しました。

【永川】「戸田光彦・・・終わったな・・・」



その頃、そのパートナーのサリアは。
【サリア】「・・・貴方は誰です?」
ある男に出くわしていました。その男とは。

【横山】「私かい?・・・横山章仁、で分かるかなぁ・・・」
【サリア】「技術界の技術をこの世界に持ち込んだ張本人、ですか?」
【横山】「ま、そんなところだ。」
横山章仁。ある意味、奇妙な組み合わせです。

<後編へ続く>

このページについて
掲載号
週刊チャオ第224号
ページ番号
67 / 78
この作品について
タイトル
魔術師狂想曲(マジシャン・ラプソディ)
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第182号
最終掲載
週刊チャオ第227号
連載期間
約10ヵ月12日