第21話「神に届く、希望(のぞみ)」・前編
【戸田】「ブレイブクラッシャーっ!」
【永川】「ぐはぁっ・・・!」
ほとんど何もできずに、ただ攻撃を食らうだけの永川。
と、そこに、戸田が持っていた通信装置(技術界で横山が作ったもの)に、連絡が入りました。
【横山】『どうやら地上の部隊が全滅したようだ・・・まぁ全滅させた連中はあの3匹が始末するだろうが。
とにかく、作戦変更だ。森野総帥もお呼びだ、さっさと片付けて来たまえ。』
魔術師狂想曲(マジシャン・ラプソディ)・第21話「神に届く、希望(のぞみ)」
【ガナーシュ】「さて・・・そろそろ飽きてきたな・・・トドメといくか・・・」
と、神野の近くで接近戦をしていたガナーシュは数歩下がると、
【ガナーシュ】「射抜け氷槍!ホワイトスピア・ブラストぉっ!」
16話で神楽坂・川島両ペア相手に見せたホワイトスピア・レインは氷の槍を雨のように降らす技ですが、
このブラストは一本の巨大な槍を単体の敵に突き刺す技。状況によって使い分けます。
さて、巨大な一本の槍が神野にまっすぐ向かってきます。
【トリシャ】「由希恵っ!」
【神野】「・・・・・」
ところが神野は、全く動きません。
・・・そして、いよいよ槍が神野を貫こうとした、その瞬間。
【ガナーシュ】「!?」
【トリシャ】「えっ・・・!?」
神野は、あの巨大な槍を、いとも簡単に素手で掴んで止めたのです。しかも、片手で。
【神野】「この程度なの・・・?」
【ガナーシュ】「何ぃっ!?貴様、どこにそんな力がっ!?」
【神野】「ええ、最初は無かったわ。・・・でも、今なら。」
そう、全く動かないことによって、体力を回復していたのです。
ガナーシュはほとんど剣でしか攻撃して来ませんでしたから、魔力も剣を使う程度。
・・・つまり、ほとんど完璧な状態。
神野はそのまま、なんと巨大な槍を片手でへし折ってしまいました。
【ガナーシュ】「!?」
【神野】「・・・あたしを誰だと思ってるの・・・?太陽女王(ヘリオクイーン)、神野由希恵よ・・・?」
一歩一歩、神野はガナーシュの方へ向かっていきます。
【トリシャ】「ゆ・・・由希恵・・・」
トリシャも口出しすらできません。彼女には、神野に『神』が舞い降りて乗り移ったかのように見えました。
見る人が見たら、後光が差していたかも知れません。
【神野】「その昔、この世界にたくさんの国があって互いに争っていた時代、国の数だけ王はいた。
だけど、古代帝国の流れを汲む1国は皇帝を名乗り、諸国も表向きは皇帝に平伏した・・・」
【ガナーシュ】「何の話だ・・・!」
【神野】「あたしは女王。そのあたしが平伏するのはただ一人!
・・・『皇帝』(ザ・エンペラー)、永川慶十郎のみ!!」
つまり、永川以外の相手には負けない。それは、彼女の決意でもありました。
その気迫に、ガナーシュはズルズルと下がっていきます。
【ガナーシュ】「な、何をする気だ・・・っ!」
【神野】「舞えよ不死鳥!フェニックスレイっ!!!」
そして、必殺技。巨大な不死鳥が向かいます。
【ガナーシュ】「う、うわああぁぁぁっ!!!」
ガナーシュが逃げようと後ろを向いた時には、既に不死鳥に飲み込まれていました。
・・・その跡には、何も残っていませんでした。
【神野】「ふぅ・・・勝ったみたいね・・・」
【トリシャ】「・・・由希恵ってそんなに凄かったっけ?」
【神野】「う~ん、どうなんだろ。なんか気がついたらやってたって感じ。」
・・・どうやら、あまり自覚はないようです。ひょっとしたら、本当に『神』が乗り移っていたのかも知れません。
さて、サリアを戦闘とする主人公一行は。
【川島】「・・・ん?」
【サララ】「何かあった?」
【川島】「いや、ここの壁、変だなーっと思って。」
【カナル】「おい、これ・・・隠し扉じゃねぇか?」
どうやら、そのようです。
【神楽坂】「という事は、この奥に、誰か幹部クラスの敵が?」
【サリア】「かも知れません・・・私が行きますので、皆さんは先へ行って下さい。」
【神楽坂】「でも、1匹で大丈夫なんですか?」
永川は、ここにはいません。
【サリア】「ええ、無理はしないつもりです。」
【川島】「それじゃ、気をつけて下さい!」
【サリア】「ええ!」
と、サリアは隠し扉を開けて、その先へと向かいました。
【川島】「ふぅ・・・結局あたしらだけになっちゃったわね。」
【神楽坂】「どうするんですか?敵のトップがいたりしたら。」
【川島】「というかいるんじゃない?主人公とヒロインがラスボスと対決するんだから。」
いや、そうなんでしょうけど、それを言ったら元も子もないのでは。
【神楽坂】「はぁ・・・」
この妙な説得力に、神楽坂も納得するしかありませんでした。同時に、覚悟も。
<中編に続く>