第17話「4組の、戦い」・前編

競技場の、控え室。
次の試合で対戦する神野ペアと牧原ペアがいます。
【神野】「ねぇ牧原、・・・見たい?あの2組の戦い。」
【牧原】「当たり前やろ。せやけど、しゃあないわ。」
控え室からは、戦いは見れません。技術界のようにビデオなんて代物はありませんからね。


魔術師狂想曲(マジシャン・ラプソディ)・第17話「4組の、戦い」


【ゲオルグ】「なぁ、それにしても・・・」
【トリシャ】「どした?」
【ゲオルグ】「直接対戦する相手同士同じ部屋で待つって、普通ありえなくないか?」
・・・確かに。普通の試合でそんなことしようもんならさあ大変。
【トリシャ】「・・・なんかよく分からないけど、あたしらだからいいんじゃない?」
【ゲオルグ】「それもそうだな。」
元々仲が良い4組ですし、互いに手の内は知り尽くしています。部屋を分ける意味もありません。


【村井】「サヴィエ、いくわよ・・・」
【サヴィエ】「ええ!」
【村井・サヴィエ】「舞の二十四番、藤裏葉(ふじのうらば)っ!!」
いきなり『舞』が炸裂します。村井とサヴィエは、ワープしたように永川とサリアの裏へ。

【永川】「ダークネスフィールド!」
永川が防御を張った次の瞬間、四方から激しい攻撃が永川ペアを襲います。
【永川】「耐えてくれ・・・っ!」
・・・何とか耐えきりました。防御には相当ヒビが入りましたが、セーフ。

【神楽坂】「あの舞を、耐えるなんて!?」
【川島】「さすがは四天王同士、ね・・・」

【永川】「いきなり二十番台か・・・」
【村井】「でも結局防がれたら同じだし。」
と、次を構えます。


【村井・サヴィエ】「舞の三十番、竹河(たけかわ)っ!!」
今度は無数の氷の刃が伸び、永川とサリアのところに向かってきます。
【永川】「竹河かっ!サリア!」
【サリア】「ええ!グランドウォール!!」
防御技発動。しかし、壁に次々と刺さっていく氷の刃は、確実に壁を削っていきます。
そして。
【神楽坂】「壊れたっ!」
・・・しかし、氷の刃はそこまで。永川に攻撃を与えることはできませんでした。
さらに、壁の向こうには、永川しかいません。
【村井】「でも、畳み掛ければ・・・!?サリアがいない!?」
【サヴィエ】「まさかっ!」
壁だけ残して、村井ペアの後ろに回りこんでいたのです。
【サリア】「遅いです!アーシィ・グレイブ!!」
一撃。サヴィエは急上昇して避けましたが、村井は直撃。
【村井】「くっ・・・」

しかし、彼女にとってこれは大きなダメージではありません。ですが、もっと大きなダメージが。
サヴィエと引き離されてしまったのです。
【永川】「悪いけど、これで二十番台から先は撃てない・・・」
二十番以降は、舞の発動にサヴィエの協力が必要なのです。
三十番の竹河ですら永川ペアにダメージを与えられなかった以上、これは致命的。

しかし、戦えない訳ではありません。急上昇したサヴィエが向きを変えて急降下し、
【サヴィエ】「トルネードブレイク!」
【サリア】「くぅっ!」
不意を突いてサリアに攻撃。直撃です。

村井はそのスキにサヴィエのところにつこうとしますが、永川が剣を抜いてさせてくれません。
【村井】「やっぱり無理か・・・」
【永川】「舞を封じなければ、僕らに勝ち目は無いからね・・・」
・・・そんな事はないとは思うんですけど、まぁ有利に試合を運ぶためには不可欠な条件ではあります。

しかし、純粋な剣の腕では村井が上でした。
【永川】「しまった!」
わずかなスキを突いて村井は飛び退き、サヴィエの隣へ。
【サリア】「ケイ、ごめんなさい・・・」
【永川】「こうなったら・・・持ちこたえるしかない・・・」

持ちこたえるしかない、というのにも根拠はあります。
舞は村井とサヴィエの体力をかなり削るのです。強ければ、強い程。
そして、既に2発撃っている。一方永川は、まだあまり魔術を使っていません。
持久戦になれば有利と判断したのです。

【村井】「だったら・・・その前に決める・・・サヴィエ、いくわよ・・・!」
【サヴィエ】「ええ・・・!」

【永川】「来る!最後の2つは撃てないはずだから・・・三十四番の浮舟(うきふね)!」
最後の2つは撃てない、というのは、まだ彼女は修行中の身で、三十六ある舞のうち最後の2つはマスターしていない、ということ。
つまり、村井の最強の『舞』は三十四番の浮舟、という事なのです。

・・・の、はずですが。
【村井】「永川・・・言っとくけど、あれから1年以上経ってるんだよ・・・?」
【永川】「・・・?」
【村井】「その間、何もしてない訳がないでしょ・・・」
【永川】「まさか・・・!」
【村井】「ええ、そのまさかよ・・・!」
    (本当は、まだ完璧じゃないんだけど・・・撃つしかない!)

そして。
【村井・サヴィエ】「・・・舞の三十六番!夢浮橋(ゆめのうきはし)っ!!!」

その名が唱えられた瞬間、村井とサヴィエは永川の後ろにいました。
そして、次の瞬間。

永川とサリアのいたところで、物凄い衝撃音が。
そして、氷と風が、ある形を成して浮かび上がりました。

【川島】「・・・これが・・・夢浮橋・・・」

そう、橋のように。

<中編へ続く>

このページについて
掲載号
週刊チャオ第220号
ページ番号
54 / 78
この作品について
タイトル
魔術師狂想曲(マジシャン・ラプソディ)
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第182号
最終掲載
週刊チャオ第227号
連載期間
約10ヵ月12日