第16話「真実(ほんとう)の、力」・後編
第16話・後編
試合終了直後。
村井が、木更津のところに来ました。
【村井】「・・・大丈夫?」
【木更津】「あ、はい!
・・・こっちこそ、ごめんなさい!ケガさせちゃって・・・」
【村井】「ああ、これ?」
と、右頬を指します。
【村井】「こんぐらいなら平気だから。高校の頃はこんな傷しょっちゅうだったし。
あたしも若かったな・・・」
彼女、一応まだ19歳なんですけどね。
あんまり関係ありませんけど、こういう若い人って最近いますよね。
一方、観客席でも。
【ゲオルグ】「しかし、左で戦うところ、久しぶりに見たなぁ・・・」
【神野】「それだけ彼女が凄いって事でしょ。
朋子に血まで流させたのは、慶十郎ぐらいなもんでしょ?」
【永川】「神野だって勝ってたじゃないか・・・」
【神野】「・・・そうだっけ?
でも、流血はさせてないはずよ?」
【サリア】「流血云々の問題じゃないような・・・血を流したって負ける訳じゃないですし。」
そこに、神楽坂ペアと川島ペアがようやく到着。
【トリシャ】「あ、こんにちは!」
【神楽坂】「ど、どうなったんですか?」
【永川】「本人に聞いた方がいいと思うよ・・・!?」
永川が、川島の傷に気がつきました。
【永川】「何があった!?」
【川島】「バレちゃしょうがないわね・・・というかバレない方が不自然ね。
・・・ガナーシュがいたのよ、ガナーシュが。」
全員、驚きます。
【牧原】「ガナーシュやて!?」
【神野】「その傷、まさか・・・戦ったのね?」
【神楽坂】「はい・・・途中でクレーベルが現れて、『準備がある』ってガナーシュを連れて帰りました・・・」
【トリシャ】「クレーベルまで!?」
【ゲオルグ】「いよいよマジだな・・・どうする?」
【永川】「相手がどこにいるか分からない以上、どうしようもない・・・くそっ・・・」
こういうパターンが、一番もどかしいものです。
しかし、その後SEVENTH HEAVENを見かけることはなくなりました。
恐らく、単に同じ場所に居合わせなかっただけでしょうけれど。
大会の方も問題なく進んでいき、旧四天王も順当に勝ち上がっていきました。
【神野】「いよいよね・・・」
【村井】「準決勝か・・・」
【牧原】「結局、ウチら4組になってもうたなぁ。」
【永川】「旧友同士の内輪バトルなんて、誰が見るんだろう・・・」
・・・そう、準決勝に残った4組は、見事に旧四天王。
【木更津】「やっぱり、凄いんですね・・・」
【川島】「なんかもう、知り合いってだけで自分までも凄い感じが。」
【神楽坂】「別世界だよなぁ・・・」
【カナル】「ところで、誰と誰が当たるんだ?」
【サララ】「永川さん・サリアさんと村井さん・サヴィエさん、
神野さん・トリシャさんと牧原さん・ゲオルグさんですね。」
【ヴァレイユ】「このレベルだと、何が起こるか分からないわ・・・」
順当であれば、永川ペアと神野ペアですが、正直実力はほぼ互角。
何より、本人達は互いに謙遜し合っているので、全く読めません。
そして、いよいよ準決勝当日。1日に2試合がまとめて行われます。
【神楽坂】「まずは永川さんペアと村井さんペアか・・・」
【木更津】「村井先輩、全力を出したらどれだけ強いんだろう・・・」
木更津と戦った時は、『舞』の不使用、更に利き腕ではない右手での勝負と、いわば2つのハンデを背負って、それでも木更津を圧倒しました。
(最も、そのうち右手での勝負については木更津が打ち破りましたが)
永川と戦うとなれば、当然本気を出すでしょう。果たして、どんな戦いになるのか。
【永川】「よろしく。」
【村井】「ええ、お願いね。」
と、握手の時、村井は左手を出しました。無論、永川は右利きですので、これでは握手ができません。
【永川】「何のつもり・・・?」
【村井】「あ、ごめん。ずっと左で練習してたから、なんか勢いで。」
慌てて右手を出します。
【永川】「最初から左を使うなんて、珍しいね・・・」
【村井】「そりゃ相手が相手だしね。」
【永川】「僕、そんなに強いかなぁ・・・」
【村井】「戦えば分かるんじゃない?」
【永川】「それもそうだね・・・」
と、それぞれの場所に下がりました。
【審判】「時間無制限、両者倒れたらそこで終了!
レディー・・・ゴーっ!!」
そして、準決勝がいよいよ始まりました。
続く