第16話「真実(ほんとう)の、力」・中編

第16話・中編


木更津と村井の戦いは、剣での戦いになっていました。無論、木更津劣勢。
【木更津】(う、うわぁ・・・守るだけで精一杯だよ・・・)
村井の剣には、全くスキが見えません。


【ガナーシュ】「いくぜ、死ぬ前によく見てな・・・」
ガナーシュは右腕を構えて、
【ガナーシュ】「射抜け氷槍!ホワイトスピア・レイン!!」
ガナーシュがそう叫ぶと、無数の氷の槍が、2組の方へ伸びていきました。

これが、ガナーシュの必殺技。並大抵の盾では、防げるはずもありません。
【神楽坂】「っ!!」
【川島】「ど、どうすれば!?」
【カナル】「みんなまとめて必殺技ブチ込んで相殺するしかねぇだろ!!」
カナルが叫びました。確かに、それしか方法は無さそうです。
そして、2組同時に、必殺技。容量の都合でセリフ省略。

次の瞬間、爆発が巻き起こりました。

【ガナーシュ】「さて、どうだ・・・?」


【木更津】(で、でも、相手だって人間なんだから、どこかに絶対スキがあるはず・・・!)
木更津は必死でスキを窺います。・・・すると、見えました。
【木更津】「あったっ!」
その一瞬のスキを突いて、木更津は剣を前に向け、村井を斬りました。
【村井】「!?」


村井の右頬と、川島の左頬から、血が流れました。それは、ほぼ同時刻だったのですが、無論両者が知るはずもありません。


【川島】「ふぅ・・・ギリギリセーフね・・・」
川島こそ頬を切られましたが、他は全員何とか無傷。あの状況下では奇跡的です。

【村井】「やるじゃん、香織ちゃん。」
村井は持っている剣を左手に持ち変えると、右手で頬から流れる血を拭いました。


【村井】「・・・それじゃ、続き、いこっか。」
そう言い、村井は再び剣を振り下ろしました。・・・左手に持ったままで。
【木更津】「・・・え?ひ、左!?」
戸惑う木更津。しかし、右で戦っていた時と、ほとんど変わっていません。

何とか食い止める木更津。しかし、「左から(木更津から見ると右から)」という慣れない攻撃に、完全に劣勢になっていました。
【木更津】(・・・いや、それだけじゃない!それを差し引いても、むしろ、上手い・・・まさかっ!?)
と思った瞬間、村井が話しかけました。
【村井】「香織ちゃん、さすが1年生のエースだね・・・あたしが血を流すなんて、2年前永川にボロ負けして以来。
     ・・・だから、特別に教えてあげる。本当は、左利きなんだよね、あたし・・・」

【木更津】「!?」
嫌な予感が的中してしまいました。さらに、村井は続けます。

【村井】「あたしは剣術家みたいなところに生まれて、小さい頃からずっと修行させられてたんだけど、ああいう武術系の型って全部右なんだよね。
     だから小さい頃から右も左と同じように使えるように修行させられてたワケ。
     最もあたしとしては、左の方が楽だし得意なんだけど、意表を突くために普段は隠してるんだよね・・・」
観客がたくさんいる競技場のド真ん中でバラすのも変な気はしますが、普通の人は案外気づかないものです。

そんな事情で、彼女は普段は右手を使って生活しています。無論、他のペアがいない時などは左を使うのですが。
これを知っているのは、旧四天王ぐらい。彼女も旧四天王の前では左を使います。


【神楽坂】「だ、大丈夫ですか・・・?」
【川島】「このくらい大丈夫よ。それより・・・どうする?」

と、その瞬間。

【クレーベル】「珍しいね、ガナーシュ・・・君がそれを使っても勝てないなんて・・・」
【神楽坂】「く、クレーベル!?」
【クレーベル】「おや、君か・・・久しぶりだね・・・」
なんと、クレーベル=ゼムリャが現れたのです。
14話で神楽坂の耳元で囁いてた、あの男です。

これで、SEVENTH HEAVENが2匹。
【川島】「あいつがクレーベル・・・」

【ガナーシュ】「うるせぇな・・・旧四天王が1組多かっただけで逃げ帰った臆病者が。」
【クレーベル】「君は戦略的撤退という言葉を知らないようだね・・・まぁいい。
        上からの命令だ・・・準備がある。帰るぞ・・・」
【ガナーシュ】「ちっ・・・貴様ら、覚えてろよ・・・」
クレーベルに半ば連れられるように、ガナーシュは消えました。

【カナル】「命拾いしたのか・・・?俺たち・・・」
【サララ】「ええ・・・いずれにせよ、このままでは負けていた・・・」
両ペア、魔力も体力も、限界に来ていました。おまけに、川島は流血。これでは、これ以上戦っても無理でした。


【サヴィエ】「朋子が左で戦うなんて・・・道理で出番無くなりますね・・・」
【ヴァレイユ】「そ、そういう問題なんですか!?」
と、ヴァレイユが突っ込んだ次の瞬間、
【サヴィエ】「エア・ファイナリィ!!」
サヴィエの必殺技がヴァレイユを直撃。
【ヴァレイユ】「きゃあああっ!!」
ヴァレイユは地面に叩きつけられ、失格です。

【木更津】(な、何とかしないと・・・)
しかし、もう村井にスキという言葉は存在しませんでした。
村井は木更津の剣を丁寧に薙ぎ払い、一撃。

【木更津】「そ、そんな・・・」
しかし、そのまま彼女は倒れました。

【審判】「そこまで!村井朋子&サヴィエ=デュセノの勝ち!」

<後編に続く>

このページについて
掲載号
週刊チャオ第219号
ページ番号
52 / 78
この作品について
タイトル
魔術師狂想曲(マジシャン・ラプソディ)
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第182号
最終掲載
週刊チャオ第227号
連載期間
約10ヵ月12日