第1話「扉を、開く」・中編

第1話・中編


【川島】「ねぇ、神楽坂・・・裏山の向こうって、住宅街だったわよねぇ?」
【神楽坂】「確か。」
そこに広がっていたのは、草原。まばらに家が建っています。

【サララ】「家も私達のものと明らかに違います・・・ひょっとするとこれは・・・」
【神楽坂】「過去の世界か、異世界・・・ってか?」
【サララ】「ええ・・・」

すると、草原を前に立ち尽くす2組のペアのところに、1人の少女とそのパートナーらしきチャオがやってきました。
そしていきなり、一言。

【少女】「正解!」
【神楽坂】「へ?」
【少女】「ここはあなた達が住んでいる世界とは別の、異世界。『魔術界』へ、ようこそ!」
【川島】「ま、魔術界!?」
【チャオ】「香織、自己紹介!」
【少女】「あ!忘れてた!あたしの名前は木更津香織(きさらづ・かおり)。
     こっちがパートナーのヴァレイユ=セルティーね。」
【ヴァレイユ】「よろしく!」
【神楽坂】「は、はぁ。」

ジェットコースターのような急展開に、訳も分からない2組。
木更津は近くにある家へと2人を誘うと、ゆっくり説明を始めました。

【木更津】「この世界は、魔術が発達していて、誰でも使えるの。えいっ!」
彼女が手首を少しひねると、氷の塊が現れました。
【木更津】「魔術には8つの属性があって、あたしは氷。
      魔術で戦って生計を立てる人を、魔術師と呼ぶの。」

・・・以下、説明を要約すると、こんな感じ。
神楽坂が元々いた世界は、魔術ではなく技術が発達しているため、「技術界」と呼ばれています。
さっきの扉は技術界と魔術界を繋ぐもので、木更津の家は代々扉を管理する役目にありました。
そして今、ヴァレイユと1組で扉の近くに住んで、扉を管理しているのが彼女。現在16歳だとか。
この家はそのための家で、この世界や扉に関する書物などが多数あります。家族は別のところに住んでいるのだそうです。

【ヴァレイユ】「ココにある古文書によると、技術界の人も魔術界に来れば、魔術が使えるようになるらしいわ。
        ・・・つまり、あなた達も。」
【川島】「あたしらも!?嘘でしょう?」
と、冗談半分に川島が腕を振ってみると。

・・・バッシャーン、という感じの音がしました。

【ヴァレイユ】「涼子さんの魔術界での属性は水みたいね・・・」
【木更津】「ぞ、雑巾どこだっけ・・・?」
・・・全員ビショ濡れ。
【川島】「ま、マジ・・・?」
夢じゃないかと思った彼女、今度は神楽坂を一発殴ってみました。

【神楽坂】「い、痛いです・・・夢じゃないと思います・・・」
【サララ】「だ、大丈夫?」

・・・気を取り直して、ついでに全員の属性を確認して。

【ヴァレイユ】「・・・神楽坂くんが光、カナルくんが火、サララさんが風ね。」
【サララ】「他にはどんな属性があるのですか?」
【ヴァレイユ】「あたしは雷なの。他に、闇と地の属性があって、8つ。」

さらに、魔術の説明が続きます。
魔術師は魔術を「技」として魔術でいくつかの「形」を作り戦います。
剣を作ったり、壁を作って防御したり、あるいは遠距離からの攻撃だったり。
技を正式に発動する時は「呪式」というものを唱えてから技の名前を言い、技を出します。これが、魔術の原則。
しかし、呪式は省略可能で、スピードが必要である戦闘において唱える人はまずいません。

【神楽坂】「呪式って、どんなもんなんすか?」
【木更津】「んじゃ、やってみよっか?外でやってみるね。」
と言って、全員が外へ。

【木更津】「それじゃ、いくね。
      ・・・時も空も全て凍てつき、六面の氷が世を渡る!往けよ氷塊!アイスキュービック!」
そう唱えると、氷の塊がたくさん生まれ、次々と飛んでいきました。

【川島】「す、凄い・・・」
【カナル】「レベルが全然違うぜ・・・」

【木更津】「ううん、慣れの問題だと思うよ?
      さっきみんなの魔術見せてもらったけど、みんなあたしより魔力はあるんじゃないのかな?」

魔力、つまり魔術の力。これの大小が、この世界では影響してきます。
大きければ魔術師になる道が開ける。スポーツ選手と同じようなものです。
(なお、魔力は遺伝ではなく、偶然性が高いと言われています)

・・・こんな感じで、一通り話を聞きました。
【神楽坂】「あれ、もう夜?」
よく考えれば、夕方に来たのですから、しばらく時間が経てば夜になります。
【木更津】「泊まっていく?」
【川島】「いいの?」
【木更津】「うん、そんなに広い部屋じゃないけど・・・」
【神楽坂】「って、泊まるんすか!?」
【川島】「せっかくだし。」

・・・という訳で、木更津の家に泊まることになりました。

<後編へ続く>

このページについて
掲載号
週刊チャオ第182号
ページ番号
2 / 78
この作品について
タイトル
魔術師狂想曲(マジシャン・ラプソディ)
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第182号
最終掲載
週刊チャオ第227号
連載期間
約10ヵ月12日