第1話「扉を、開く」・前編
見渡す限りの大都会、ステーションスクエア。
人とチャオが共存するこの世界。
・・・しかし、このどこかに「異世界への扉」があることを、何人の人間が、何匹のチャオが、知ってるのでしょうか・・・
魔術師狂想曲(マジシャン・ラプソディ) 第1話・扉を、開く
この世界では、人間とチャオの「パートナー制」が定着しています。
1人の人間と1匹のチャオがパートナー契約を結び、パートナーとして行動します。
但し、結ぶか結ばないかはそれぞれの自由。パートナーを取らない人間やチャオも多数います。
また、基本的に男の人には男のチャオ、女の人には女のチャオがつきますが、例外も多いです。
さて、そんなステーションスクエアの一角に立つのが、チャトル大学付属高校。
今回の話の主人公は、この高校の2年生の男の子と、そのパートナーです。
【チャオ】「な、なんだよあれ!?」
【少年】「どーせ向島とかいう教授がミサイル辺りブッ放したんじゃないんすか?」
教室の窓から荒れたグラウンドを眺めるのは、神楽坂啓(かぐらざか・けい)。
パートナーのチャオはカナル=アンタレスと言います。
この高校は、名前から分かるようにチャトル大学の付属高校。
3年生には、かの天才美少女・ルーティア=リネージュが在籍していることでも知られています。
それだけならいいのですが、学校をファンが包囲したり、なぜかたまに戦争が始まったりするわで、毎日大騒ぎです。
授業が成立してるのも、実は不思議なほどなのです。
(最も、戦争についてはは彼女が原因という訳ではなく、
神楽坂が話している向島とかいうマッドサイエンティストのせいなのですが、ここら辺の話は別の機会に)
【少女】「ちょっと神楽坂、次の授業移動でしょ?何ボーっとしてんのよ。」
【チャオ】「涼子、ちょっと言いすぎでは・・・」
こっちは神楽坂の近所に住むクラスメート、川島涼子(かわしま・りょうこ)です。
パートナーはサララ=マリシア。
ちなみに、神楽坂と川島は小学校時代からの「腐れ縁」(神楽坂談)だそうです。
(ただ、周囲は「らぶらぶ」だと思っているようですが・・・)
【神楽坂】「いや、次の授業物理っしょ?苦手だし、誰かミサイルとかブッ放して授業潰れないかな、って思って。」
【川島】「あのさぁ、この学校は普通の学校じゃないのよ?そんなので潰れる訳ないじゃない。
天才美少女ルーティアだけじゃなくって、16歳の少年実業家や謎の術を使う女子高生4人組とか、ありえない人達が普通にいる学校なのよ?」
【神楽坂】「まぁ、そりゃそうなんだけどさ・・・」
しぶしぶ移動する神楽坂とカナルでした。
さて、話は放課後になります。
神楽坂ペアも川島ペアも部活に入っていませんので、暇です。
【川島】「・・・そういえばさ、裏山の噂って知ってる?」
【神楽坂】「裏山?」
この高校には、小さな裏山があります。しかし、整備されておらず、荒れ放題。
そのため、
【女生徒A】「すると、子供が突然現れて、『おかあさ~ん』って・・・」
【女生徒B】「きゃ~っ!」
なんて話もひとつやふたつじゃありません。
【カナル】「それがどうしたってんだ?」
【川島】「どうせ暇だし、今から行ってみない?裏山に。」
【神楽坂】「い、今からですか!?」
突然の提案。ためらう神楽坂ですが、
【川島】「・・・怖いんだ?」
【神楽坂】「違います!」
・・・行くハメに。
んで、裏山。
【カナル】「相当荒れてんな、これ・・・」
【サララ】「私達チャオは飛べるからいいのですが・・・」
【神楽坂】「人間はつらいよ・・・」
【川島】「ちょっと、何手間取ってんの?」
【神楽坂】「雑草が邪魔なんです!」
・・・そんなこんなで30分程度。
【川島】「どれだけ進んだ?」
【サララ】「あまり進んでないような気がします・・・」
【カナル】「確かに、校舎が近いぜ?」
カナルが振り返りますが、校舎はかなり近距離。
そんな中、神楽坂はあるものを発見しました。
【神楽坂】「ねぇ、これって・・・洞窟ですよねぇ?」
【カナル】「確かに。」
・・・と、なると。
【川島】「突入!」
【神楽坂】「マジっすか?」
【川島】「お宝があったりして!」
いやまさか、ないとは思いますが。
という訳で、中へ。
【神楽坂】「・・・明かり、ないんですか?」
【川島】「ある訳ないじゃない!」
まぁ、それもそうです。洞窟があるなんて想定してませんでしたから。
しかし、しばらく行くと、あるものが。
【サララ】「・・・扉、ですか・・・」
【カナル】「開けるしかねぇだろっ!」
【神楽坂】「え、カナル!?」
神楽坂が止める間もなく、カナルは扉を開けました。強い光が差し込みます。
【川島】「ま、まぶしいっ!?」
・・・しかし、その先には、とんでもないものが待っていました。
<中編へ続く>