2A

次の日、その幸せはあっさりと壊れる形となった。

スラムとはこういう街なのだろうか?

…答えはイエスだろう。

事件があったのは朝だった。
その日も俺たちはいつものように工場に出かけようと、
毎度のようにジャムに手を伸ばしていたときだった。
亜子が俺に話しかけようと前のめりになった瞬間、
一匹の赤いチャオが入り込んできた。ピュアチャオらしい。

最近のチャオは赤色属性が多いという。
退化か、進化か、それは分からない。

俺の周りも最近赤色が多くなっている気がする。

そうして、『赤井』亜子はおびえているチャオを介抱した。
それは逃げてきているみたいだったので、
亜子はそのチャオをさっとタンスの裏に隠した。

と、今度は茶色い肌をした男が数人窓から顔を覗かせた。
見たことある人たちだと思ったら近くのジャム工場の人達だった。
彼らは俺と顔見知りというのもあるのか、穏やかな口調で、

「なぁ、この辺にチャオがいたのを見かけなかったか?」
「…いや、見てねぇな。」
「そうか…いやぁ、困った。あれで『3本』は出来たのに…。」

…『3本』…?

俺の思考回路は一瞬止まり、
言葉が思い浮かばないまま、彼らに、質問を投げかけた。

「へぇ…。…は?…お前ら…?」
「ん?何か詰まったことでもあったのか。」
「…おまえら、チャオをどうするつもりだったんだ?」
「え…?おまえ、知らなかったのか…。…そこにあるじゃないか。」

……。そこにある…?
俺が周りをきょろきょろと見ていた瞬間、
男は冗談でも言うかのような軽い口調でこう言い放った。



「ジャムだよ。」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第300号
ページ番号
5 / 17
この作品について
タイトル
JAM
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第300号