I never have "notihng" 3
子供のチャオは宇宙船のベッドの上で気が付いた。
―ちゃちゃお?ちゃー?
―んー。須磨。悪いが、翻訳機を持ってきてくれ。
ほら、スパイ用のあの機械だ。
―分かりました。
須磨は作哉の部屋から「翻訳糸こんにゃく」を取りだしてきた。
昔地球ではやったアニメの秘密道具なるものらしい。
須磨は一度子供の時に見たことがあると思ったが、
何か一文字多いような気がしてならなかった。
しかしながら性能は良いらしく、
彼らは普通にチャオの声を聞き取ることが出来た。
―ここは・・・どこ?お母さんは?
―お母さんとはぐれたのかい?
―うん、お母さんはいないの・・・?
―ここにはいないよ。君が山で倒れているから看病してあげたんだ。
―ありがとう。・・・みんな、チャオじゃない?
その言葉に全員どきりとした。
子供だとしても、人間と知られるのはまずい。
だが、チャオはどうやら人間を知っているらしかった。
しかし、抵抗も罵倒もしなかった。
―「にんげん」が、何をしに来たの?
速く逃げた方が良いよ。僕の仲間がみんないっているんだ。
「にんげん」は殺せって・・・。
―君は、ぼくたち人間をバカにはしないのかい?
―バカになんかしないよ!僕を助けてくれたのに。
―そうか。君は良い子だ。
君の名前は何て言うんだい?俺は「須磨」。そっちは?
―僕は「デラックス」っていうんだ!よろしくね。
―なら、握手をしようか。
デラックスは少し頭のぽよをはてなにして聞いた。
どうやら握手を知らないらしい。
しかし、やり方を教えるとデラックスは喜んで、手をさしのべた。
でも、須磨はこんなけなげな行動をするチャオが、
本当に人を殺すのかと少し考えた。
いや、今から高度な教育を受けて、
この純粋な心も色々なものに染められていくのだろう。
それは昔地球で暮らしていた人間のように。
そんな時、作哉がデラックスに聞いた。
―デラックス。君はどこから来たんだ?
―うんとね、この山の麓に町があるんだ。
ここで山菜取りをしていたんだけど、崖から落ちて、
どこかも分からないまま気を失ったんだ。
―そうか・・・。
その夜、作哉はメンバーを全員集めて会議を開いた。
その内容は主に、明日の夜に宇宙船で帰ることだった。
―デラックス。俺たちは明日帰るんだ。
君は麓の道まで分かるだろう?
―うん!
―よし、良い子だ。なら、俺たちと出会ったことは絶対に話すなよ!
―分かっているよ。みんな内緒でここに来たんでしょ?
―そう言うことだ。
じゃ、そろそろ、立てるよな?
―うん!
しかし、デラックスがぴょんと着地した瞬間、
彼は悲鳴を上げた。
―うぅ、足が痛いよ・・・。
一時間後、須磨と冬樹は話し合っていた。
―・・・どうやら怪我をしているらしいが、
チャオの内部は俺たちにはよく分からないぜ・・・。
―ここに置いておくしかないのか?
それはこいつの死を意味するんじゃないのか?
―須磨、何が言いたいんだ?
―俺は、麓の町までこいつを運んでいく。
―何・・・!?
おまえ!それがどういう事か分かるのか?
―だけど、俺は生きている命を見過ごせない!
しかし、今回は冬樹は引かなかった。
冬樹は叫んだ。
―おまえ、郁さんにもう会いたくないのか!?
―え・・・?
郁に会えない・・・?
もう、二度と・・・?
・・・。
その夜、須磨は郁の写真を見ながら話していた。
―郁。おまえに前言ったことがあるよな。
俺は生きている奴を手放しておけないんだよ。
例え、それがチャオでも。
―大変だ作哉!デラックスと須磨がいねぇ!
みんなへ。
俺は。
やっぱり、デラックスを野放しにはできねぇ。
―周りを探すんだ!近くにまだいるかもしれない!
でもよぉ、冬樹らは先に行ってくれ。
俺のせいで、みんなを殺したくはないから。
―畜生!須磨!おまえがいない第5SRFBDなんてありえねぇ!
そして、郁にはこういってくれ。
「頼むから、泣かないでくれ」ってな・・・。