I never have "notihng" 4
その頃須磨はチャオの町の前にいた。
高性能な宇宙船が沢山飛び交っている。
―ここからが、チャオの町の領域・・・。
―須磨さん、もう良いよ。大丈夫だよ。
須磨さんが死ぬのはいやだ!
デラックスは本当におびえているらしかった。
でも俺は歩き続けた。
すると、いきなり正面に沢山のチャオが銃を向けて待ちかまえていた。
―汚れた人間どもが・・・何をしに来た!?
―あぁ、デラックスちゃん!
早くこっちに来るのよ!早く!
どうやら、言葉を発した二人はデラックスの両親らしかった。
―お父さん!お母さん!聞いて!
この人は悪い人じゃないんだ!
―何を言っているんだ!そいつは汚れている人間だ。
待ってろ、すぐに助けてやるからな!
そうして、含み笑いをしながら父親が銃を構えたとき、
デラックスはとっさに須磨の銃を背中からとって、
父親に向けて一発撃った。
銃弾は彼らをすっとかすっていった。
―な・・・。
―汚れているのはどっちなんだよ!お父さん!
笑いながら生きているものを殺すのはきれいなことなの!?
この人は死にかけていた僕を命がけで助けてくれたよ。
例え、僕らが人間を殺すことをしっていても、
怪我をした僕をここまで運んでくれたんだよ。
そうだよ、何で?
何でそんな人間が追放されなくちゃ行けないの!?
何でこんなお父さんが・・・チャオが威張っているの!?
誰か、僕に教えてよ!
誰がため人は殺されているの?
誰がため僕らは銃を握っているの?
誰が正しいの?
誰が正しくて、誰が間違っているのか、教えてよ!
父親はしばらくうつむいていたが、
銃を須磨の方に向けた。
そして、引き金にゆっくりと手をかけた。
その夜、本部に須磨が戻ることはなかった。
全員愕然とした。
―今回も一人が犠牲になった。
いや、本来なら犠牲になることはなかった。
だが・・・。
―いや、作哉。ここは拍手をしてあげよう。
それが、須磨のためじゃないか。
冬樹が言うと誰かが手を叩きはじめ、
やがて、全員が泣きながら手を叩いた。
そして、宇宙船は来たときより随分軽くなって、
また黒い空へと飛びだった。
一ヶ月後、郁は誰もいない夜道を一人で帰っていた。
夜道とは言ってもこの地下の住世界では、
赤いランプが空を舞っていた。
郁は誰かに話しかけるようにつぶやいていた。
―今日はね、私の誕生日なのよ。
誕生日プレゼントは・・・何が良いかな?
もう、何も欲しくないよ。
欲しいのは・・・欲しいのは・・・。
郁は涙を流しながら、つぶやいた。
―欲しいのはね、須磨、須磨で良いんだよ。
須磨がいれば私はうれしい。
須磨がいれば私は笑うことが出来るんだよ。
なんで、何でいなくなるの?
なんで・・・。
郁は歩く力も失せてそこに座り込んだ。
―須磨・・・須磨で良いのに・・・。
その時、誰かが郁の身体をそっと抱きしめた。
―・・・はは、最近頼むものが安くなっていっているな。
ゴメン、収入低くてさ。
―え・・・?
郁はそっと後ろを振り向いた。
須磨が・・・立っていた。
Fin