【訳ありの少女、憑く】
「はいっ!あたしと先輩は一心同体で~す!」
「…ちょっと待て。それって一体…。」
「ん~、まぁ、幽霊になるとつらいんですよ~?
だから、誰かのエネルギーを貰わないと生きていけないっていうか~♪」
「…。(いや、死んでるんだけどね)」
「というわけで、先輩、これからもよろしくお願いします!
陽菜さんも、たまにはベッドが揺れたり、
シャワーが勝手に出てくることもあるかも知れませんが、よろしくですーv」
「あ、はいはいー。了解ー。」
「…。(普通に了解してるけど、それってポルターガイストだからな!!)」
…
俺は家を出て学校に行くことにした。
身体は重くなくなったし、幽霊がハイテンションだったのでまぁ、良しとしよう。
…だけど。
「あー、体は軽くなったけど、精神的に重くなったな…。」
「もう、疲れたときはあたしが充電してあげますよー♪」
「いや、いらないから…。
ってゆーか…学校に着いてこないで…?」
「えぇ~?だってぇ、あたしと先輩は一心同体なのですよ~♪」
「…。分かった。分かったから…。
頼むから、その特徴のある語尾(例:♪、v、!、?、~)を止めてくれ。
読者的に迷惑だ。」
「え~、ダメですょ~♪
これがあたしのアイデンティティなんですから~v」
「…。(俺はこんな奴とプライベートを共にするのか…!?)」
思えば、生前(←いや、まだ生きているみたいだけど)、
朋の性格はこんなにハイテンションではなかった。
むしろ、おどおどしていて誰とも話そうとしない、気の弱い奴だった。
それが、今はどうしたんだろう?
死んでから(←実際死んでいないけど)威勢が着いたのだろうか?
…一体彼女に何が?
…
(ここからはあたしの声が聞こえない人もいるので、
あたしの発言は『』と表現させて頂きます~♪)
学校に着くと、さすがに朋も口をつぐむ。
それで良い。そこで俺が返答すると、俺は変態だし、
シカトしたら何を言われるか分からない。
…と、突然、朋が俺の背中に抱きついてくる。
「充電、充電」と言った声が聞こえる気がする。
充電されてんのは一体どっちだよ…。
「よっす、京介。」
「…弘二。」
「明日にでも練習しないか?」
「…んー。悪い、今週はちょっと無理だ。」
「え?どうして?」
「何というか…あれだよ、肩に漬け物石というか…。」
『つ…漬け物石って、ひどい~!!先輩のバカ~!!』
「い…痛い痛い痛い!叩くな!やめて、やめてくれえっ!」
「…大丈夫か、オマエ?」
「…あ、平気だ。
ま、まぁ、…つまり言えば肩こりの原因が充電が必要っていうか…。」
「…日本語が変だぞ?
まぁ、頑張って病気治せよ…。…ついでに頭も。」
「は…はははは…。」
俺は朋を背中に固定したまま体育館裏に行く。
朝は誰もいないから、好都合だ。
「もう、先輩ひどすぎますっ!」
「朋、だからって、見えない人の前で俺をどつくな。」
「だってだって、女の子を漬け物石に例えるなんてぇ…TT」
「いや、もしオマエがブスだったら顔面石っていっている所だったぞ?」
「が、顔面石…?…ん、んー……それよりはマシかなぁ…?」
「ましだ。…とまぁ、そういうわけで、当分は黙っていてくれ。」
「あ、はぃv」
「ってか、朋、幽霊って触れるモノなのか?」
「んー?どうでしょ?でも、あたしと先輩はお互い触れますよねー?
…先輩、襲わないでくださいよっ!」
「…安心しろ。俺もうるさいのには手を出したくない。
でも…オオカミが目を覚ましたら分からないけどな。」
「えー!?先輩変態っ!」
「しゃぁないだろ、俺かって男だ。」
…
と、そんなこんなで教室へと戻り、
ちょうど一限目の授業のチャイムがなる。
だが、今日はちょうど出張というわけで、自習だ。
隣にいる女のコが俺に話しかけてきた。
最近になって隣になった奴だ。
あまり最初から仲は良くなかったが、
しばらくするうちに音楽の好みが同じで良く話をするようになった。
「ねぇ、岩淵君、ラルクっていいよねー。」
「あぁ、俺も特にあのベースがな…。」
「そうそうtetsuは私も大好きー。
あ、そうだ前借りたCD返すネー。」
「あ、そうだったな。今日それ言おうと思ってた。」
彼女は鞄をまさぐってそのCDを探す。
と、次の瞬間「嘘っ!」と彼女が叫ぶ。
「…どうした?」
「CDが粉々になってる…。」
「…え?」「今日返そうと思ってちゃんと入れておいたのに…。」
「…うっわー。…オマエ、姉弟げんかで鞄を武器にしただろ?」
「してないって…もう、誰が壊したのカナ…?」
「…んー、心当たりが一つある。」
「へ?」「ゴメンちょっとトイレへ行って来る。」
俺は思いきり『後ろに居る奴』の耳を引っ張る。
彼女は少々驚いているようだ。
(見えない人間にとってはまるでヨガをしているように見えるらしい。)
「痛い痛い!ごめんなさい!」と聞こえるが、
俺は構わずいつの耳を引っ張り続け、
そして、男子便所の中にこもった。