~訳あり少女編~【訳ありの少女、出る】

京介はいつものようにベッドから起きあがる。

そりゃさ、学校に行くのが憂鬱になるときかってあるさ。
まぁ、それはそれで仕方ない。
たまにはそう言う日もある…。あるはあるんだが…。

…だが今日はガマンしようともそうもいかない。
異常に身体が重い。重いの何のって。

「…兄貴、朝から疲れた顔するなよ。
 最近、女とはめっきり会ってないんでしょ?」
「…会って無いというか…オマエがダメって言うからだろ?
 合コンもここ最近は断りっぱなしだし…。」
「まぁ、アンタの場合は女というとろくな奴つれてこないしー。
 それでいいんじゃねーの?」
「…ま、それはそれで楽だけどな…。」

京介は歯を磨こうと鏡の前に立つ。
鏡には疲れた顔が映っている。
そして、ヤケに元気そうな女の顔も映っている。

「ったく、陽菜、今俺は使用中…。」

…誰もいない。おかしいな。足音さえも聞こえない。
振り返って、もう一度鏡を見る。
鏡には疲れた顔が映っている。
そして、ヤケに元気そうな女の顔も映っている。

あ…ってゆーか…陽菜じゃない…。

「…!!!!!!!!!!!!!!!」

あ…あわわわわわわわわわわわ…。

「そ、そこに立っているオマエに映っている鏡はなんだ!?」
「…兄貴ー、洗面所の前でなに日本語全壊にしてんのー?
つーか、早く替わって…。」
「あ、はいはい…。」

こ、この家が呪われている?
いや、そんなはずはない!

確かにおじいちゃんの遺影もあるし、(←おじいちゃんに失礼)
その遺影を狙って昔、ボウガンで的当てしたこともあったし、(←不謹慎)
冷蔵庫の中の陽菜のケーキを勝手に食べちゃったけど…(←無関係)

いや、でも、違う違う!!
あの女はどう考えてもモダンだ!
つか、昔の女がキャミソールなんて着ているはずがない!!

「…兄貴、早くご飯食べちゃいなよ。」
「あ…ああ…。」
「何かさっきよりも気分が悪そう…。」
「…今日は休みたいけど、ここにもいたくない…。」
「…何故に?」
「理由は多分オマエは一生分からないと思う。」

まさか幽霊が取り憑いているかも…とは言い難い。
むしろ引かれる。そんなこと妹には言えない…

「んー、理由は分かるよ。後ろに抱きついている女の子のせいでしょ?」
「……?……!
おぅ!よく分かったな。そうそう!その女が後ろに………………

って、はああああああああああああ!?」

「!!ちょっとぉ、ビックリして醤油を牛乳に入れちゃったじゃない!」
「いやいやいやいや!牛乳を醤油に入れたなんてどうでも良い!
何でオマエに見えているんだよ!しかも素で!」
「え?だって露骨に兄貴に抱きついているしー。
…ってか、主語と目的語、逆ー…。」
「あのなっ、それって普通に考えて幽霊だろ!」
(↑他の小説で、幽霊が普通なんてまずありません。)
「え?幽霊なの?あ、そう言えば、そっか…。」

俺はコーヒーをすする。
妹には見えて、俺には見えない。
いや、それでも誰かに見えるだけまだ良いのかも知れない。
俺はコーヒーを置いて、陽菜に小声で呟く。

「…俺には見えない。鏡を通さないと見えない。
いったいあいつは誰なんだ…一体…。」
「見えないって…それって、あたしのことです?」
「そうそう、オマエだよ。
ったく、鏡を通さないと見えないなんて……………

 って、ええええええええええええええええっ!?」

俺は思いきりコーヒーを吹き出す。
陽菜が後ろで「あ、ばっちい(←福井弁で「汚い」)」と言ったのが聞こえる。
いや、でも、思考回路は明らかにその女だけに向いていた。

「ちょっ、…もう、驚かせないでくださいよ!
 心臓止まりそうだったじゃないですか!」
「もう止まってるだろーが!いつからそこにいた!」
「いつからって、…昨日くらいからかなv
 しかも、心臓は止まってないですし~♪
 あたしまだ病院で生きているもん、…死にかけだけど~」
「…。…おまえ…朋…?」

俺は落ち着きを取り戻した後、その女の顔を見る。
ふわふわとした茶髪は陽菜にそっくり。
でも、陽菜よりは背が低い。その笑顔は見覚えがあった。

「そ、お久しぶりですvあ、妹さん、あたし、『岩崎 朋』と申しま~す♪」
「あ、こちらこそ。私、『岩淵 陽菜』と申します…。」
「…(言っておくけど、陽菜の話している相手は幽霊だからな…。)」
「あたし、京介クンの後輩でーすv」
「…後輩っていうか…バンド仲間って言うかー…。」
「いいじゃないですか!どうせ先輩って呼んでいたんですし、
 これからもそう呼ばせて頂きます~」

……。……?
これからも…ってどういう…?

このページについて
掲載号
週刊チャオ第330号
ページ番号
4 / 7
この作品について
タイトル
暇日。
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第327号
最終掲載
週刊チャオ第330号
連載期間
約22日