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男は結局、情状酌量、正当防衛云々により、
懲役3年執行猶予5年の判決を受けた。
しかし、彼はもう高校には戻らなかった。
その日からはギターを初めて、
バスケットボール、ボーカルにも精を入れた。
そうして、また新たな仲間が増え始めて、
10年が経過したころだった。
3
女は15歳の時に、初めて「あれ」を経験した。
しかし、それは綺麗でも、なんでもなかった。
その経験の「代金」は5万円だった。
女は小学校以来、学校には通っていない。
彼女は学校が嫌いだった。
友達もいたが、家に呼んで遊ぶことしかなかった。
だから、裏の道に、手を染めた。
人間は不思議なことだが、
すさんだ過去を持つ者は、
まるで磁石のようにすさんだ世界、
夜「だけ」が美しい世界へと誘われるのである。
そして、ある時、
彼女はまた新しい男をケータイで知り合い、
その男と、夜に会う予定だった。
しかし、待ち合わせの場所の公園で彼女を見つけた、
数人の図体の良い男たちが、彼女を取り囲んだ。
女は悟った。
―…騙された…。
こいつらはどうせ今から私を襲うつもりなんだろう。
女は至って冷静だった。
仕事が仕事だ。これは日常茶飯事以外の何物でもないのだ。
―喘ぎ声くらいは出して上げようかしら…?
ベンチに座り、目を閉じた。
が、男達はいつまで経っても彼女の身体に触れない。
女は不思議に思って、
そっと…目を開けた。
「…え?」
「はは、おまえさ、強姦されそうになってるのに、
そんな冷静な顔して何やってんだよ。」
「…嘘…。」
「…?あぁ、こいつらはもう気絶しているさ。」
「…一応、私の「客」なんですけど…。」
「客?おいおい、呼んだ俺の立場はどうなるんだよ。」
彼女はまた、先ほど目を開けたときと同様、
「へ?」という顔をして彼を見た。
「…助けてくれなくても良いのに。」
「なんで?」
「だって、どうせ、…。」
「…へへ、良いじゃねぇか。
「客」なんだから、「何したって自由」なんだろ?」
「…。」
女は男を見た。
男は手をくいっと動かして言った。
「こっちこいよ。」
4
3年の時間は二人にとって一番短かった。
結局あの後二人はくっついて、
そして、同じような行動に身を染めた。
「思えば…バカよね、私たちって。」
「そうか?…。…そうかもな。」
彼らはまたホテルを出て街に車を入れる。
アクセル、ブレーキ共に順調だった。
しかし、…どうやら後続車両は順調でもないようだった。
赤い光、青い光、白い車、黒い車。
それらが一体化した、正義色の車が、
ゆっくりと、速く、彼らに近づいていた。
「…またか、…楽しみだな。」