第4話 発現

グレンが叫ぶ。

グレン「クオン!落ち着いて集中しろ!」
久遠「え?」
グレン「いいから!目を閉じて集中しろ。」

俺は言われた通りに目を閉じ、集中する事にした。
本音を言うと徐々に近づいてくる野獣がいるのに集中できるわけが無いんだけど。
そしてまた聞こえるグレンの声。
「そして、想像しろ。自分の中から『何か』が出てくる感じを!」
訳がわからなかった。
いきなり言われても…、と思った。
でもしないと、身を守れないことがわかっていたから、俺は想像した。
でも何も起こらない。
段々近づいてくる足音…。
目に見えた位置からするともうすぐ草陰から現れる…。

−ガサッ

来た。
もうだめだ、そんな事をまた思った。
でも目を瞑って前より落ち着いているからなのかわからないけど、考えが違った。
死ぬとは思わなかった。
いや、死にたくないんだ。
想像し、願った。
出てきて欲しいと思った。
出てきた『何か」が俺を助け、力になるなら。
俺は一心に願った。

久遠「出て来い!!」

頼むから出てきてくれと…。

その瞬間、俺の手に光が集まりだした。
暖かい光。
そしてグレンの光のように形を作っていく。
光の中から重みのあるものが出てきた。
出てきたというより手の中に納まっていた。
グレンと同じ様な抜き身の刀。

久遠「うお、重っ!」
グレン「出てきたな。よくやった。」

手に持っている刀は想像していたより重たくて刃が俺の両足の間に刺さった。
剣道をやっているとか関係なかった。
実際の刀はこんなにも重たくて、命を奪える重み…、みたいだった。

グレン「いいか?!斬ろうとするな!そのまま振り上げろ!そしてそのまま前に倒れるように足を踏み出すんだ!」

グレンに言われたように刀を振り上げて、そのまま足を踏み出した。
すると刀の重みで刃が野獣の頭に振り下ろされる。
そのまま野獣を真ん中から切り裂いた。
血が噴き出して自分に少しかかる。
倒れそうになる勢いと、刀の重みで、刀は自分の少し前の地面に突き刺さっていた。
そして消えた。

グレン「よくやった。やればできるじゃないか。」
久遠「…、え…?」

俺は軽く放心状態だった。
自分が何をしたのか、何が起こったのか。
そんな事ばかりが頭の中をぐるぐる回っていた。


落ち着きを取り戻した頃にはグレンはチャオに戻っていた。

グレン「落ち着いたか。お疲れさん。」
久遠「あ、ああ。お疲れ様」
グレン「さて、落ち着いてすぐですまないが説明だな」
久遠「あ、ああ。よろしく頼む。」
グレン「まず、俺が人になったのは、人形(ヒトガタ)と言う。」
久遠「人形?ああ、人の形をしてるから人形なのか。」
グレン「そう言うことだ。チャオでも出来るヤツは少ない。
ある程度能力が発現してないとな。」
久遠「能力って、あの武器出るのが?」
グレン「そうだ。あれが説明しようとしていた武器を出せる能力。
名称は無い。この世界の人間なら、出そうと思えば出せるからな。
ただ、武器はその人物にあった物しか出ない。」
久遠「俺が武器を出せたのは?俺はこの世界の人間じゃないぞ。」
グレン「よくは解らないが、クオンがこの世界に対応した身体になってるんだろうな」

そう言って目の前の焚き火を消し。グレンは立ち上がった。

グレン「さて、群れをなしていた獣は倒したから、村に戻るぞ。
クオン、お前は俺に付いて来い。こうなれば能力の使い方を教えてやるから。」
久遠「え?本当に?ありがたいよ…、うん、本当にありがとう…!」
グレン「まぁしょうがないだろ。能力を発動させてしまったんだ。
最後まで面倒見てやる。でも少しでも手伝えよ?
能力を扱えるようになったら、後はお前の好きにしたらいいさ。
まずは獣を倒した金を貰うから先に村の役場だな…。」

そう言ったグレンは村に戻る方角に歩き出そうとした時、またグレンは人形になり
グレン「人のほうが歩くの速いからな。それに別に人形の状態では疲れる、という事は無いからこの姿で行く。
さぁ行くぞ、クオン。」

グレンと村に向かう為に森を抜ける事にした。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第228号
ページ番号
4 / 8
この作品について
タイトル
永遠の鎖
作者
銀チャオ
初回掲載
週刊チャオ第227号
最終掲載
週刊チャオ第229号
連載期間
約15日