第2話 異世界
そして、俺に飛びついた野獣は俺の左肩を、大きな口で噛みついた。
久遠「ああああぁあああ!!」
痛い、痛すぎる。
18年間生きてきて感じた事の無い痛みだった。
目のすぐ横で肩に噛み付いている野獣。
その野獣の牙が自分の肩を貫通させようとしてる。
そんな事をずっと続く強烈な痛みの中で思った。
何度も引き剥がそうとした、噛まれている方の左手はもう手に力が入らない。
右手だけでも、と思い力を込めたが、痛みで力が出ない。
異世界と思われる、世界に来て。
何をしたらいいのかわからなくなって。
異世界に何故、来たのか思い出して。
思い出して叫んだ…。
久遠「(叫ばなければ良かった…。)」
まるで自分が死ぬ様な後悔をした。
でも俺はそんな、悪い方の事を考えていた。
「俺はここで死ぬのかな」
と。
諦めて目を瞑った時。
近くで空気を裂く音が聞こえた。
正確には何かを裂く様な音だった気がする。
そして音に続き、肩にかかる力、重みが無くなった。
俺はおそるおそる、目を開けた。
目の前に紫の燃えるような炎の様な感じを受ける髪をした男が立っているのが見えた。
手に血の付いた刀を持っているのも。
俺はそこで意識を失った。
久遠「うぅ…ん。ん?」
背中に変な違和感を覚え俺は目を開けた。
目を開けた時に見えたのは小さく、浮いている『○』い何か。
?「ん?あぁ、目が覚めたのか。」
誰かが喋った。
俺は声の出所を探すように目を彷徨わせているとその『○』い何かの下に顔があるのに気付いた。
久遠「え?え?今喋ったの、あんた?」
その目の前にいた『何か』は
?「あ?喋ったのは俺だけど。それより、お前…、もしかして『チャオ』を知らないのか?」
久遠「え?何?その『チャオ』って?」
?「ハァ…。」
その目の前にいる『何か』は大きくため息をした。
久遠「な、なんだよ!気になるだろ!」
?「あ、あぁ、どこの田舎者だか知らないが、『チャオ』を知らないとはな。
『チャオ』とは俺の事を言うんだ。
で、そんな俺達をまとめて『チャオ』、チャオ族だ。」
久遠「…?え?何それ?族という事はさ。人と同じなの?」
?「あぁ、お前達、人、と同じだ。それよりお前本当に何も知らないんだな。」
久遠「何も知らないって…、俺、多分、いや、絶対この世界の人間じゃないし…。」
?「ん?あー、まさか、お前、違う世界から来たのか?」
久遠「え?普通の反応だなやけに…。そうだよ、そのあんたからしたら、違う世界から来たんだよ」
?「あー、それなら何も知らなくても、納得できるな。
何か聞いた事があるんだよな異世界から来たる人についてな」
『チャオ』とかいう、目の前のやつは、うんうん、頷いてた。
?「まぁ、気にするな。こうして出会えたのも何かの縁だ。色々教えてやるよ。
この世界で生きて行く為に最低限必要なことを」
そのチャオは俺に色々教えてくれた。
この世界の名は『シルフィーム』。
この世界、シルフィームは今、戦争中だと。
その戦争の中心は『王国アレクサンドリア』、『帝国マイティスト』の両国。
そして中立を貫いている『アルサレム共和国』。
あとはこの世界における事。
種族は人とチャオ族。
この世界ではこの、人とチャオ族に差はない。
つまりどっちも同等であり。この世界の当たり前な事だと言う。
俺は話を聞いている限り、自分たちの世界と変わらない点を見つけた。
まず喋る言葉。
そして書かれている文字。
これは俺達の世界と同じ、と思った。