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「…亜子。俺は最後のわがままを言って、良いか?」
「ここにいるつもりなの?」
「俺は、真実を知りたい。」「私がいる。」
亜子は少し不機嫌そうに、自分に指を指した。
俺は軽くほほえんで、
亜子の背中に手を回した。
「分かってる。…でも、まだ、核が残っている。
俺は知らなければならないんだ。」
「ゆー…?」
「あの時は、歪んだバットをありがとう。
俺が、子供達のために作ったバットだよな…。」
「そう、あれは…。」
「亜子を危険にさらすことは分かっている。
でも、俺が守る。例えどんな強大な力が来ても、
俺は全部打ち返してみせる。
壊れた世界を、作り直した自分自身に誇りを持って、さ。」
俺は自分の銃と、唖夢の銃を拾った。
そして、ホテルの方にそれを向ける仕草をした後、
亜子の方を向いた。
彼女はそれを見て、少し苦笑いをしていたが、
「頼りになるね」と一言言った後、続けて、
「さぁ、行こうよ。早くしないと、危険だよ。」
そこに唖夢のような戦闘に似合う風貌は、ない。
それに、戦闘のストレスを耐えれるような、性格でも、ない。
だが、俺がいる限り、俺は亜子を助けて行けそうな気がした。
壊れやすい人間だが、大切に扱っていこうと思う。
と、その時、俺ははっと気がついた。
唖夢は、一体どこへ行ったのか?
まさか、彼女は、RBに戻ったのか…?
俺がいなくなった以上、RBは必死に彼女を問いつめるだろう。
その時、唖夢の行動がばれていたとしたら…。
「亜子、我慢してくれ。」
「へ?」
「いまから、唖夢の所へ向かう。」「女?」「そう、…怒るなよ。」
「別に良いけど…。」「…助けに行くぞ。」「はいはい」
…少し、亜子の口調がイライラしているのが分かる。
…後から、可愛がってあげないと、今度はこいつに殺されそうな気がした。
しかし、今は、自分の記憶の片隅を握る人物は、
1人しか、思い浮かばない。
「唖夢…。」
………
俺と亜子はホテルの前までやってきた。
…誰かが前方を歩いている。
間違いない、唖夢だ。
「唖夢!」「…ゆー?…と、…女ね。何のよう?」
「それ以上行くな!」
「何故止められないと行けないの?」
「…シックスセンス。」「…ばーか、何を冗談言って…、…!」
刹那、唖夢の持っていた携帯がバットで打たれたように、はじかれた。
銃を持っている男が目の前に立っている。
…隊長だ。…いや、今は違う。
「…橋本…隊長。いや、もう隊長という必要はないですね。」
「…おまえ、どうして逃げなかった?
…頭を使っていなかったのか?」
「俺が逃げていたら、唖夢を殺すつもりだったんですね。」
「…どうしてそう思う。」
「唖夢の行動は反抗分子です。
しかも、俺が貧困地区に逃げてしまえば、間違いなく、…。」
「なるほど。でも、それだけじゃないようだな。」
と、俺はここで、一つのデータを取り出した。
「これって…。」「そう、亜子が以前貸してくれた、政府のデータ。」
「これが、どうかしたのか?」
「これを詳細に見たが、あなたの許可したドームがいっこうに見あたらない。
俺はおかしいと思いました。
いや、でも、よくよくよく考えれば、そもそもおかしかったんですよ。
夜に節電を徹底する政府が、
ドームを思い切り建設してみてください、大バッシングですよ。
それこそ、政府は崩壊するくらいに。」
「…前言撤回だ。
お前は優秀な人間だよ。
正解。
…俺こそがRBの全てであり、枢軸だ。」