4B
倒れた。
俺はとっさに駆け寄る。
気絶はしていないようだ。
ただ、こちらを見ようとせずに、倒れたまま荒い息が聞こえる。
…泣いている。
「…唖夢?」
「…それ以上、近づかないで…。」
「お前…泣いているのか…?」「見ないで…見ないでよ…。」
「撃たないのか?」「誰のせいで…誰のせいでこうなったのよ…。」
「唖夢…。」
「もう、名前なんか呼ばないで。
あなたは…もう、私の恋人じゃない…。」
唖夢は、泣いていた。
仕事と言っても、それは所詮理由に過ぎないのだ。
誰もが、そんな理由で感情を押し殺せる事は出来ない。
よくよく考えれば、そう言うことだったのかも知れない。
この3年間。
唖夢をこうやって苦しめていたのかもしれない。
唖夢にこうやって泣かせることを考えていたのかも知れない。
俺は、はっと気がついた。
…俺は、亜子を選ぶ…のか…、それとも…?
5A・『唖夢を選ぶ』
5B・『亜子を選ぶ』