3B
……その夜。
部屋で俺は、そのジャムを開けてみた。
…苺の香りがする。本当に、まるで手作りのようだ。
…亜…………子。
一瞬、誰かの名前が浮かんだ。
胸がずきずきする。痛い、痛い、痛い…。
……
『ねぇ、ゆー。子供達と遊んであげてよ。』
『えぇ、おいおい…今日はせっかくの休養日なんだから…。』
『ダメ。私なんか毎日家事してるんだから!
たまには私を気遣ってよねぇ。』
『もう、分かったよ…
おーい!お前ら!チャオのいる畑にでも行くか!』
……
「大丈夫?」「…亜…子……?」
「ちょっと、何で恋人の名前を間違えるのよ!唖夢よ!唖夢!」
「はっ!…あ、なんだ、唖夢か…。」
「む、なによそれ、ひどーい!」
「い、いや、気にするな。
ところで俺は、なんて言っていたんだ?」
「なんか…「あこ」って…。」
「…「あこ」?…知らないな…。」「知らなくて良いの!私以外の女なんて!」
「なんだそりゃ。」
俺は唖夢が「夕食先に行くね」と言う言葉を聞いて、
ソファーから起きあがった。
胸の中で、わずかにまた青い炎が燃えている。
…後日。
俺と唖夢は恋人になったあの丘にいた。
今日はベンチに座ってゆっくりと体を休める日だ。
しかし、今回の任務が失敗したため、
お金は入っては来なかった。
まぁ、それでもある意味不名誉なナンバー1の地位は変わらないが…。
「ねぇ、ゆー。…私、昨日本気で考えたの。」「何を?」
「あなたのこと。ゆーのこと。
私がこのまま恋人でもやっていけるのかなぁって…。」
「何でそう思う?」
唖夢はふと、暗い顔をして、一枚の紙を差し出した。
GPS機能の発信を表すデータだ。
俺の記録は勿論一部…消えていた。
唖夢…お前は一体何を…。
「昨日、公園でどうして携帯の電源を切ったの?」
…そう言うことか。
電源を切ったのが逆にまずかったのか。
そう。彼女は情報委員もやっているから情報の管理をしないはずがない。
「あ、あれは…。」
俺は言葉を濁らせた。
しかし、唖夢はどんどんと俺に詰め寄ってきた。
目は完全に正気を失っているようにも見えた。
「もし私がピンチな時、あなたはどうするつもりだったの?
見殺し?
見殺しにするつもりだったの!?
ねぇ、答えてよ。何してたの、ゆー!!!!!」
4A・『…過去を知りたかっただけ…だ。』
4B・『何もしてねぇよ!!!』