3A
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「RBの…者です。」
「!!」
とっさに女が走り出した。
やはり、この女が…例の、犯人なのか!
俺は銃をさっと出す。
この距離なら当たる…と、引き金を引こうとしたその瞬間。
「あの肩の傷は…!」
わずかに首と肩の間に見えた、銃創。
あれは間違いなく、麻酔銃だ…。
麻酔銃?
……
「…今、撃ったの?
 …感覚が無くなっていく…。」
「俺は…。」
「…、ねぇ、…。私が…分か…る…?………。」
……!
…もしかして、彼女は…!
しかし、また、次の瞬間、
今度はどこに潜んでいたのか、唖夢が銃を片手に、
女に引き金を引いた。
「唖夢!撃つな!」
遅かった。
乾いた空に、乾いた音が鳴り響く。
公園にいた人々はここでの鳥の狩りがあるのだろうと、振り向かない。
俺と唖夢だけが、撃たれた人間の事を知っていた。
そして、その正体は俺だけが…。
「…どうやら彼女みたいね。
 …ねぇ、ゆー。どうして撃つなって叫んだの?」
「……。」「ねぇ。」
「…あぁ、ダミーだと思ったんだよ。」「ホント?」「嘘じゃない。」
俺は肩の銃創を覗く。
今度は麻酔銃でないことを期待して、それを覗いたのだが…。
…覗いたのだが…。
「…おまえ、どうして死んでしまったんだよ…。」
「ん?どうしたの?」
「いや、何でもない。さ、戻ろうか、唖夢。」
俺は銃を片づけてホテルへと戻る。
と、…男がホテルへ行くのを確認した後、
唖夢は救急車を呼ぼうとして、ふと他の所へ電話をかけた。
そして、しばらくしたあと、話を止めて、
少し、笑ってその死んだ女に呟く。
「私の幸せは…あなたには、渡さないよ。…ねぇ、…。」
唖夢は心底嬉しそうに銃を片づけた後、
はしゃぐ子供達と同じように笑顔を浮かべてその場を去った。
その女は、死んだ。
俺はそのニュースを見た後、唖夢の部屋へと向かった。
「今回はやっぱり私たちの仕事が良かったからだよね!」
「あぁ…。」「んー?元気ないなぁ!」「お前が元気すぎるだけだよ。」
唖夢は特に嬉しいときはそのぶん、指を良くしゃぶる。
ちゅーちゅーと音を立てながら、彼女は俺に問いかけた。
「…ねぇ、私たちって、恋人だよね?」
「…そうだな。」
それしか、返しようがなかった。
あの生かした女はもう死んだ。
俺が愛す「べき」人物は、たった1人しかいないのだ。
約束された未来の扉が、
それは、唖夢にとってかもしれないが、
きっと待っている。
Fin
【アルバム2】唖夢の幸せ
結局、俺たちは一年後に職場結婚した。
俺は28歳、相手は20歳。
少し、年の差が大きいが、結婚したら、大して変わらない。
幸せを二人で望んでいく…それだけだ。
たまに恋人の時から、どんどんラブラブ度がおちると、
スーツ姿の橋本隊長に笑って呟かれるが、
まぁ、今のままだったら多分数十年は持つことだろう。
そして、仕事は相変わらず続けていく。
人を殺すのはつらく感じるが、二人でいれば、半減する。
たまに疑問は残るが、
唖夢の幸せそうな顔を見ると、間違いでは無いように感じてしまう。
今の俺の悩みは、後輩に成績を抜かれることだけかも知れない。
 
【アルバム11】形だけの存在
ヒーローカオスチャオは一生変わらない形で俺たちを和ませてくれる。
しかし、その真意は分からない。
唖夢に可愛がられるために俺と会った…?
…分からない。
もはや、ヒーローカオスチャオは普通のチャオとなっている。
あの無表情さが伝えようとした何かも、
彼自身が忘れかけている。
でも、俺と唖夢が幸せそうに笑っている限り、
彼も、きっと幸せなのだろう。
例え、形だけの存在となっても…。

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