~斬首な情報屋~ 2

…一年前 某月某日


俺はいつものように高校に通っていた。
後、この先は俺は本名で呼ばれても「某」と言うことにする。

俺には親はいない。
どっちももう死んでしまった。
死んだ後、俺は祖父母の支援を受けて学校に通い続けている。

この日は俺が情報屋となった日である。
その話を始めていこう。



学校には全校生徒が1000人くらいいるらしい。
そんな多くもない、かどうかはよく分からないが、
とりあえず普通に友人はいる。彼女には最近振られた。

「はぁ…。」

つまらない人生になるかと思っていた。
親もいない。祖父母も無理に支援させるわけにはいかない。
この先は副井の中で生活をしていくしかない。

「…。」

校門に入る。ちょうど桜は散りかけていた頃だった。
何かが暗示させられる。
俺の中の何かも一つ一つ散っていくようだった。

「…おはよう!」

ふいに校門の前で待ちかまえる先生に挨拶される。
俺は声が出ないまま会釈をする。
それだけで朝のテンションでは精一杯だ。…精一杯なのだ。
この先、生きていくプランは言葉には表せない。
誰かに頭を下げて生きていくので精一杯なのだ。

失意を感じながら下駄箱を開ける。ラブレターはない。
廊下を歩く。可愛い女のコとぶつかることはない。

現実はつまらないなぁと思った。
頭が良い人間はきっとつまらなさすぎる人生を送る。
頭が悪い人間もきっとつまらなさすぎる人生を送る。
じゃあ、明日は何をすればいい?

何をすれば、エキサイトな日々になれるのだろう?


と、その時だった。


ふと廊下の先に見える体育館に女子が二人、
誰にも見つからぬようそっと入っていった。

「おい!某!」「あ、下川っ!」
「朝練さぼるなよ。」
「軽音楽部に、朝練なんていつ作った?」
「作ってねぇよ。」「…冗談か。」
「で、頼みがあるんだ。
 体育館の裏にさ、楽譜間違えて捨てちゃったんだよ、
 …ゴミ捨て場から取ってきてくれない?」

「…あぁ、分かった。」
「…?今日は素直だな?やっと協調性が身に付いたか!
 いやぁ、よかったよかった!じゃ、よろしくっ!」
「…ういよ。」

俺は一度教室に行って鞄とベースギターを置いた後、
楽譜の名前だけ聞いて、体育館裏へと向かった。

…勿論、協調性云々ではない。



『某、ちょっと父さんと母さんは出かけてくるから。』
『良い子にしてまってなさいよ。
 帰ってきたら、大好きなピラフ、作ってあげるからね。』

『はぁい!』



そして、両親は帰ってこなかった。
海に飛び込んだ。
14年たった今でも、今でも死体は見つかっていない。

マペットのように操られていた二人。
それは死に行く人間の最期のように見えた。

「あの二人は一体…。」

俺は体育館の側面まで来た。
裏面まで行くとゴミ捨て場のような所がある。

「…だから…わた…!!」

誰かが何かを言い合っているのが聞こえる。
俺はそこにいる二人に気付かぬようそっと近づく。

「…何だ…?」

1人は面識がない…。
どうやら、言い寄っているのは見たことのある女子のようだ。

「彼氏に構わないでよ!
 何がしたいの?いつもいつもあの人に寄ってきて!」
「ふふ、別にあんな汗くさいサッカー馬鹿は嫌いよ。
 ただ、ちょっと聞きたいことがあってね。」
「…なにそれ?」
「あなたの彼氏のメールアドレス♪」
「…ふざけてるの?殺すよ?」
「やってみなさいな。」
「…ちっ、とにかく何が目的かは知らないけど、
 私の物なんだからねっ!」

見たことのある女子はたたたっと駆けて行ってしまった。
その目にはかすかに涙さえ見える。
よっぽど思い悩んでいたのだろうか?

俺はいけないことを見たような気がしてそこを去ろうとした…

「…ふう、最近の女子であそこまで一途なのはあこがれるわ。

 ねぇ?」

「…へ?俺?知っていたのか?」
「えぇ、何か用でもあるんでしょ?」
「まぁ、ゴミ捨て場に用事が…」「犯罪者よ、彼女。」

俺は用事を淡々と述べようとした。
…矢先に、
彼女がとんでもないことを言ったような気がした。

「今なんて…?」「犯罪者よ、彼女。」
「それってどういう…?」
「まぁ、用件だけすませたら、さっさと行って頂戴。
 で、昼休み、またここへ来て。」
「…こないという選択肢は…?」
「死。あなたに関する噂を流す。」
「お、おい、俺にそんな噂なんて物。」
「あら、嘘の噂は女の武器よ。」「…恐れ入ります。」



俺は弁当を書き込んで体育館裏へと行った。
下川から昼練をするといわれてはいたが、
練習より命の方が大切だ。

体育館裏は人も少ない。
カップルはもう小学生みたく隠れなくても、
もうオープンにしているからここに来ることもない。
他の学校では、たまに性欲溜まって来る人もいるが…
…治安は良いと信じている。

そして、その彼女はもうそこに座って待っていた。

「いらっしゃい、「某」クン。」

「…俺のHN…!!」
「3時間であなたのデータは解析したの。
 間違っていない?」
「あぁ…何をしたんだ?」
「ま、色々とね。…じゃぁ、本題へ入りましょうか。」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第323号
ページ番号
2 / 4
この作品について
タイトル
チキン・バッカー
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第323号
最終掲載
週刊チャオ第324号
連載期間
約8日