2・飛
土曜日。自分は、飛行場に連れて行かれた。
混乱している自分の手を引いて、どんどん進んでいく。
そして、ある部屋で立ち止まった。
そこはみたこともない人間の漢字が並んでいる。
そしてその中に入っていった。
「君がトビちゃんというやつね。」
ドアに入った瞬間奥の机から声がする。
おかまっぽいチャオが歩み寄ってくる。
「さてと、君が飛べなくなったチャオなのね」
飛べないと言う言葉を聞いても腹を立てる事はなかった。
それは、それ以上の希望を与えてくれたからだろうと思う。
「そうです。」
自分はとりあえず返事をした。
「そう。じゃ、単刀直入に聞くね。」
「あなたは、本当に空を飛びたい?」
諭すような、しかしその奥の厳しい目つきが自分に向く。
無論、自分は「はい」と答えた。
「ならもう一つ。それは自分の力で飛びたい?」
・・・確かにそうだ。今までそう考えてきた。
自分は「はい」と答えようとして、ふと記憶がよみがえる。
「トビは空を飛びたい?」「いつか本当に飛びたい?」
幼い頃、親にぶつけられた言葉。
「もちろん!どんな手でも!」「うん!もちろん!」
ぶつけ返した言葉。
「トビは空を飛びたい?」「いつか本当に飛びたい?」
最近、親にぶつけられた言葉。
「いや。どうせ自分では飛べないよ。」「どうせ無理だろ!」
ぶつけ返した言葉。
いつから、自分で飛ぶと言う束縛的な考えになっていたのだろう。
いつから、自分で飛べないからと言って焦っていたのだろう。
いつから、自分の「夢」を忘れていたのだろう。
そう。自分の夢は「空を飛んでみんなを見渡したいこと」だ。
幼いときからの夢だったんだ。
そうだ。何で、それを忘れていたのだろう。
「・・・で、君の答えはなんだい?」
自分は答えた。
「いいえ。例え、どんな方法でも空を飛びたい!」
自分はまくし立てるように答えた。
「そう!その言葉を待っていたのよ!」
おかまなチャオがうれしそうに答える。
はねっちもにこにことした顔を見せる。
自分は決心した。
それは自分に対する、そして空に対する挑戦だ。
「いつか絶対に空を飛ぶんだ!」
その日から自分はある練習を重ねた。
「こら!そこのは違う、そこのを押すの!」
厳しく、威厳のある指導。
しかし、自分は屈することはなかった。
だって自分の夢が叶うのだ。
この壁を乗り越えれば、必ず夢にたどり着ける。
・・・時はたち1ヶ月後。
「それでは、テストを行います!」
テスト。前の悪夢を思い出させる。
いや、自分の力で行けるはずだ!絶対!
ブルーになっている自分の心を鼓舞させる。
「次!トビ!」
「はい!」
自分の頬を軽く叩き立ち上がる。
飛行機の免許取得試験だ。
そう、自分は「羽」を飛行機に託すことにしたのだ。
ゆっくりと座席に乗る。
自分は指定通りのボタンを押し、操作を始める。
・・・一つ一つを慎重に操作をする。
そういわれ続けたので、自分もしっかりそれを守る。
横からは、審査の人が操作を見守っている。
そして、何事もなくテストは終了した。
後は結果を待つのみ。
その時、同じく羽が一つで自分と正反対の方向に羽がある、
チャオが居た。
「ねぇ、きみだれ?」
妙に親近感を覚え、話しかけられずには居られなかった。