終・夢

「私に話しかけられているの?」
敬語で返される。自分は一瞬とまどったが、
「うん、そうだよ。で、名前はなんて言うの?」
「クウ。空って書いてクウってよぶの。でも、飛べないけどね」
「そう・・・」

全く同じだ。自分と。いや、昔の自分と。
羽にコンプレックスを抱いていたあのころの自分に。
自分は何をするべきだ?と自分に問う。
答えは一つだけだった。

・・・自分は自分をさらけ出した。

「・・・うん、分かった。」
自分は無理矢理イヤな過去を思い出して、伝えた。
自分がなぜ此処にいるのか。そして、自分の夢を。
彼女は納得して、最後には笑顔で去っていった。

「・・・結果を発表します」
一週間後、結果が発表された。
周りを見渡すと、クウもいた。かなり緊張している。

・・・合格。合格。合格!!
驚きから歓喜へと自分の心を変えた。
合格発表にははっきりと、自分の名前が写っている。
「ねぇ、私も合格だったよ!」
横からうれしそうな声で話しかけてくるやつが居た。
誰かは言うまでもない。

そして、時は過ぎていく。

「ねぇ、飛行機何にする?」
「う~んそうだなぁ・・・」
自分はクウと飛行機を見に来ていた。
自家用の飛行機も買うことにした。
今、自分達はパイロットをやっている。空も飛んでいる。
そう、夢が叶ったのだ。

そして、新しい仲間も増えた。妙に気が合うやつと。
そいつは何かとつっかかってくる。
それでもって、用事も特にない自分はそいつにつきあっている。
別にいやいやでもない。顔も普通以上だし。
むしろうれしい。暇をもてあますと自分は悪いことを思い出してしまう。
それは相手も同じかもしれないし・・・。
誰かと聞かれれば、今答えるとしたら隣にいるやつかな。

そうして、日々の生活を進めていった。
自分とあいつは確実にコンプレックスを記憶から消した。

・・・一年後。

自分は、飛行機から降りてふと、手紙を書きたくなった。
そう、彼奴に。
『俺の真友へ
 
 俺は最初自分を見失っていた。事故のことでさらに。
 自分は飛べないと言うコンプレックスでつぶされていた。
 それを解放してくれたのはおまえだった。
 誰よりも自分を正直に見つめて、伝えてくれた。
 おまえにどれだけ助けられたのか。計り知れないよ。

 それに感謝するとともに、お知らせがあるんだ。
 俺ね、又新しい「羽」が出来たんだよ。
 もちろん俺じゃない。俺の子ども。
 両方とも健全な羽が生えて居るんだ。

 え?相手は誰かって?
 まぁ、妙に気が合うやつとだけ言っておくよ。
 そいつも自分と逆の方向の羽がない。
 でも、お互いに夢を叶えたんだ。
 今も、それを続けているよ。

 自分はいま空から帰ってきたところだよ。
 曇り空。それは危険な雲さ。
 でも、それを超えれば必ず晴れになる。
 そう信じて進んでいるんだ。
 
 じゃ、大切な真友。又会おうな。 トビ』

自分は手紙を送った後、ふと空見上げた。
曇り空の垣間から光が差し込み始めていた。  終わり

このページについて
掲載号
週刊チャオ第168号
ページ番号
3 / 3
この作品について
タイトル
チャオとヒコーキ曇り空わって
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第168号