「1章・始まりの時」
いつもの公園とは、そう、俺が組織から任務を受け取る所である。
俺はいつものベンチでいつものコーヒーを飲んで、
人差し指と小指を立てて、軽く振る。これが俺が俺であることを知らせるのだ。
モーションがロ○ウジーニョとかぶっているが、気にしない。
すると、今日はさっき赤ん坊が言ったように組織の人間は来ないはずなのに、
何故かいつもの男が現れた。
・・・どういうことだろう。
しかし、男とは会話をしては行けない。あくまでももらうものをもらうだけだ。
俺は自然に立ち上がり、彼の横を通った。
そして、男は言った。
―細○数子のトークは。
―ウザイ。
俺がそう言うと、男はケース入りDVDを俺に渡してその場を去った。
シーン的にミッションインポッシブルのはずだが・・・なんか違う。何故だろう?
しかし、そんなこと日常茶飯事なのでどうでも良い。
(前は、南海キャ○ディーズのし○ちゃんは―デカイ。だった。)
問題は時間外にこんなものを渡す裏の行動だ。
俺は長年の勘から、何かあると感じた。
家に帰ると、やっぱり他の3人も驚いた。
しかし、DVDは再生をしなくてはいけない。
赤ん坊はある意味緊張して、DVDをつけた。
すると、しわしわのおっさん―つまり、裏の世界のボスが出てきた。
しかし、何故か笑顔だ。
―聞いてくれ、諸君。いやー、ついに私にも孫が生まれたよ。
やっぱり、孫は可愛いな。
あぁ、赤ちゃんの顔はいつ見ても和まされる。
俺は疑惑の目で赤ん坊の方を一瞬向いて、画面にまた目を移した。
ボスの目はいつの間にか本気の顔になっていた。
―・・・で、問題はこれからだ。
昨日、某街で「能力者」が二人現れたそうだ。男女らしい。
分かっているだろうが、能力者は人類の変態が生み出した、新型だ。
健常者はこれを差別している。そして、この二人を見つけろと依頼が来た。
あぁ、差別している理由は、将来新型が人類の中心となると、
ある科学者が提唱したからだ。
要は、健常者が能力者に滅ぼされる。と言うことだ。
すると、ここでボスは少しうつむきながら又話し始めた。
―気にならなかっただろうか?おまえらがなぜあのとき公園にいたのを知っていたか。
そう、それは、孫の予言じゃ。予知能力。学会ではC・willと言われている。
孫が「うー」といいながらおまえらのいつもの公園に指を指した。
あぁ、私の孫は・・・能力者なのだ。
ボスはまた、前の方を向いて、話し始めた。
―だから、おまえらの任務は、その提唱した科学者の弱みを握り、
能力者がそんなことをしないという風な内容に書き変えさせてほしいのだ。
そして、もしも、その昨日現れた二人を見つけたら、何もするな。
おまえらも・・・健常者だろう・・・私も、息子もだ。
あの科学者の言うことは正しいかもしれない。
だが、これは「命令」だ。
いいか?
よし、では、このDVDは自然に消滅する。
そして、DVDは砂嵐に変わった。
俺たちはただその砂嵐をじっとみつめているだけだった。
―とんでもない任務を、課せられたような気がする・・・。
赤ん坊がつぶやいた。全員、うなだれた。
―とはいえども、逆らうことはできないのよ。私たち。
任務中に死ぬか、このまま動かずに組織に追われ、殺されるか。
生きられる確率が高い方を選ぶべきだと思うわよ。
―おかまの癖して、良いこといいやがる。
―う、赤ん坊なのに失礼ねぇ。ねぇ、利夫ちゃん♪
―その呼び方やめれ。
すると、マセガキがコンピュータをかたかたうちこんでから、
やがて、俺たちの方にその画面を見せて、話し始めた。
―では、その計算をしたところ、前者が2%、後者が0%でした。
―マセガキ・・・選択権は無いってことか?
―そんなこといちいち口に出さないでください。
―そうだ、調味料、おまえの口は塩辛くてたまらない。塩入れすぎだ。
砂糖を入れようぜ、もっとまろやかな性格になれるぜ。
―だまれ、赤ん坊。よけいなお世話だ。
俺はマセガキと赤ん坊を一瞥した後、タンスから武器を取り出した。
そして、愛車、ハマー2の鍵を取り出してきた。
俺は3人に言った。
―・・・いろいろと意見はあるだろうが、特筆すべきは、
ボスの赤ん坊が俺たちを選んだと言うことだ。
ボスは成功主義だ。その孫も成功主義の血が流れているはずだ。
と考えてみれば?
―私たちは限りなく成功する確率が高いってことでしょ?利夫ちゃん♪
―そういうことだ。・・・利夫ちゃん言うな。
俺はドアを思い切り開けた。
朝のきれいな光が差し込んできた。
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