「1章・始まりの時」

こちら、某地区の某小屋。

―おらぁ、さっさ起きろや!調味料!
―わかっているっつーの。寒いんだよ。
―だから何だ?俺はこんなに元気にしているのによ。
―おまえ、赤ん坊なんだからもうちょっと寝てようぜ・・・。ふああ、
 でもまぁ、しゃーない。起きるか。

まさか赤ん坊にたたき起こされるということが、
一生のうちであるとは思わなかった。
俺の名前は左藤利夫。20歳。独身だ。
そう、俺の名前はまさしく揚げ足を取りやすい名前ナンバー1だ。
「砂糖と塩」、俺の名前はこう変換できる。

中学校の時、調理実習で好きだった女子が「砂糖と塩!」と言ったのに対し、
「はいっ!」とかいって駆けだしたのを覚えている。
以後、俺はこの名前が嫌いだった。
そして、追い打ちをかけるようにこの隣の赤ん坊が、

―うわっはぁ!おまえ調味料だな!

といって、そのまま俺のコードネームは「調味料」だ。
つーか、うわっはぁって一体どんな歓喜の声をあげるのだろうか。
激マジむかつく、激マジむかつく、激マジむかつく、超ウゼェ。

そして、この赤ん坊は「タフべぃびい」という。
「べぃびい」は、最初の「い」が小さく、後から大きくするのが正しいらしい。
なんてめんどくさいコードネームだろうか。
まぁ、調味料よりは良いだろうけどさ。

で、この赤ん坊。はじめちゃんなんて目がないくらいの天才ベイビーで、
握力に自身のある俺が握力勝負で負けた。あいたたた。
さらに、先月県の大会で十種目競技をしてきて―
え・・・?あぁ、もちろんみんな驚いた。
まず、歩くことが異常だし、喋るし(選手宣誓したし)、しかも、優勝してきた。

と、ここで疑問に思っただろうがコードネームってどういうことだろうか?
そう、俺たちはこういう奴らが(まぁ、こんな赤ん坊はこいつだけだろうけど、)
沢山集まる・・・要は裏の組織と「先取り解決業」で提携している。
俺たちも立派な裏の人間だ。
そして、その提携を示すために俺らはコードネームというのをもらっている。

ついでに、先取り解決業ということについても説明しておくと、
よく見る誘拐のニュースや強盗のニュースを、
警察が解決する前に、俺たちが解決するという職だ。
つまり、依頼者からより多くの金をもらう代わりに、より早く解決するということ。
(もちろん裏の組織と利益は半々だ。)
ただ、本当は依頼者自体がブローカーなどで、裏に手を伸ばす人間がいるので、
その人達が警察にガサを入れられたくないからこっちに依頼が来ることもある。

そして、ここ「グランドスラム」もその仕事を担っている。
ここにいるのは、俺、この赤ん坊、そして・・・。

―あ、おはようございます。調味量さん。
 昨日、特殊性相対性理論を解読していたら、寝るのが遅くなりました。
―あー、それはご苦労様でした・・・。
―調味料さん。お疲れですか?女遊びなら、これを・・・。
―・・・?って、いらねぇよ!スッポンドリンクなんか!
 ってか、小学生の分際で、何でこんなこと知っているんだよ!
―悪いですか?
―悪い。超気味悪い。
―ダメですね。今は、小学生が初経する時代なんですよ。全く。
―・・・もういい。おまえと話していると疲れる。
―疲れました?ならこれを。
―だから、スッポンドリンクはいらねぇよ!

このウゼェガキはまだ10歳だ。しかしながら、IQは300ある。
計算ドリルでは「何故この足し算が成り立つか」といちいち書くものだから、
先生があっけにとられているという。
友達には体裁良くつきあっているらしい。
コードネームは「マセガキ」だが、ませているのにもほどがある。

つか、えろい。そして、あの史上最凶の赤ん坊に洗脳されやすい。
前は変なマシンガンを俺に向けて、何を言ったかというと、

―赤ん坊さんが、あなたの存在を消してほしいから、作ってきましたよ。これ。

とかいって、死にかけた。
まさか、小学生と赤ん坊によって殺されかけるとは思っても見なかった。
だが・・・これならまだ良いのだ。
問題はもう一人の爆弾人間だ。その名も―

―きゃー!利夫ちゃーん!会いたかった~!
―うぉ、出たぁ!
―ちょっとぉ、何で逃げるのよぉ!
―逃げるのではない、自分の身を守るだけだ!
―私が守ってあげるわ~!
―いらない、今の内閣よりもいらないっ!

このおかま、驚くことに彼氏がいる。

・・・いや、あえて彼女じゃなくて。

でも、その相手はなんと、「おなべ」である・・・!
(おなべ:女なのに男になりきっている、おかまの逆)

・・・ごめん、やっぱり彼女と言うべきだった。
頭がこんがらがりそうだ。

しかも、可愛い。
めちゃくちゃ可愛い。だが、一人称僕。
やることなすこと全部男。はちゃめちゃカップルであるが、
見た目は普通なので(男と女だし。)他の人は何も言わないらしい。

―・・・ここにいると自分の命が危険だから、
 今日も「いつもの所」に行ってくる。
―おいおい調味料。今日は任務を受け取る日か?
―・・・クソ赤ん坊。それくらい察しろ。
 俺はここにいたくないだけだ。

俺はため息混じりに小屋のドアを開けた。


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このページについて
掲載号
週刊チャオ第265号
ページ番号
2 / 4
この作品について
タイトル
バクチク
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第265号