「・・・成る程。高城美希か。ありきたりな名前だな。
 で、何処にいるんだ?」
「えっと、あそこのアパートの3階にいますけど・・・。」
「あ、近いのね。よし、なら間に合う!行くぞ!」
鋼志は少々何を言っているか考えていたが、分かった瞬間、
「な、何を考えているんですか!」
と、顔を赤らめながら叫んできた。そこまで必死に否定するモノか?

「うん。何とも普通すぎるな。何か嫌な予感がする。」
「あの・・・本当に呼ぶんですか?」
「当たり前だ、まぁ、此処で逃げたらおまえが弱虫だと言うことを、
 今出てきた奴にいってやるからな。」
「・・・って、まさか最初から逃がすつもり無かったんですか?」
「今更気付いたのか。俺だって命が掛かっているんだからな。」
「大げさすぎますよ!」
いや、残念ながら本当に命が掛かっているんだが。

しばらくして、その目的の子が出てきた。
「はい?誰?」
「あ・・・あの・・・高城さんのお宅でしょうか?」
バカ野郎!思い切り高城と書いてあるじゃねぇか!
「はい、そうですけど?というか、分かると思いますが・・・分からないならすいません。」
ああ、こちらこそすいません、こんなバカ野郎のせいで、とおれは心で叫んだ。
「あの・・・高城美希さんでしょうか?」
「はぁそうですけど・・・誰?」
「竹岡鋼志ですけど・・・。」
「あ~はいはい、何か用でもあるの?」

よし、じゃ、後は逃げられない状況下でどうやって告白するかだな。
俺は退散するとするか。
「あ・・・。」
「どうしたの?なんかあったの?」
「いや・・・別に何でもないよ・・・。いや、なんかあるから来たんだけど・・・。」
「・・・バカじゃないの?あんた。」
「バカです。でも、そんなバカな話を少しだけ聞いてください。」
「勝手にすれば?」
「実は・・・。」

夜に傾きつつある空のもと、俺は公園のベンチに座っていた。
懐かしい。
「ったく、やっただけやっといて人任せとは男じゃないチャオね~。」
「どわっ、いきなり話しかけてくるなよ。ヒーカ。」
「お、名前覚えてくれたチャオね。ヤゴさん。」
「で、何で出てきたんだ?」
「少し展開が早すぎるから、話を延ばすためにやって来たチャオ。」
何を言っているんだか。

「で、あいつは今告白していると言うことを何で知っているんだ?」
「とりあえず、確認チャオ。」
「何の確認だよ。」
「まぁ、確認は確認チャオ!」
怒るところではないと思うぞ。

『おいおい、俺のケータイ何見ているんだよ。』
『確認よ。浮気していないかどうか。』
『していない、していないってば。返してくれよ~。』
『あ、浮気はしていないわね、じゃ、他に確認しないと。』
『なんの確認だよ。』
『確認は確認よ!』
またか、何かヒーカの言うことが俺のあいつとの記憶にからまっている。
俺はそれだけあいつを忘れることが出来ないのか。

「何考えているチャオ?」
「いや、別に何も考えていないよ。」
「まぁ何でも良いチャオ、じゃ、今日の夜中12時に結果報告してもらうチャオ。」
そうして、ヒーカが消えた瞬間今度は鋼志が現れた。
「・・・結果はどうだったんだ?」
間を置いて鋼志はいった。
「・・・ふられました。」
「そうか。」
俺はもう、それだけしか言えなかった。元々、予想はしていた。
あの賭をOKしたときから、半分諦めてはいた。
でも、気丈になって半分脅して作戦を練って、こうして鋼志はふられた。

俺は目的を達成することが出来たと思う。
子どもを助けることが出来る。
俺は鋼志に謝った。こんなことをさせてしまった。
すると鋼志は、
「いいんです。それよりも気分が良くなりました。あなたのおかげです。
 また新しい恋を見つけて、がんばりますよ。最初からふられることは分かっていましたから。」
と言って、こころなしか気分が前よりも良くなった感じで帰っていった。

俺も帰るか、今日だけ限定でいれる俺の家に―

12時になった。俺の人生は此処で終わる。
心臓病で死ぬことになっているそうだ。あぁ・・・もう、終わりか。

・・・・・・

「進、起きてよ!早く車を動かしてもらわないと。」
「え?おまえ・・・何で此処にいるんだ?」
「何言っているの?産婦人科からようやく出ること出来て、家に帰れると思ったら、
 今度はうちの主人を認知症で病院に逆戻り?」
「え?子ども・・・あ、子ども。うん、かわいいな。」
「ったく・・・。あ、そうそう、無事に産んだからね。進寝てたけど。」

あれ?俺って今まで何していたんだっけ?
・・・。あ、思い出した。何かと出会って色々と高校生に彼女をなんたらこうたら・・・。
あれ?誰と出会ったかさっぱり忘れちまった。
・・・でも、これが本当ならこれで良いよな。
あれは、一種の悪夢だったんだ恐怖やらそんなモノが生み出した。
俺はこれからもあれを忘れずに生きていくだろう。あんな風にならないように、
全力でこいつらを守るということを忘れないで。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第199号
ページ番号
3 / 4
この作品について
タイトル
あなたの願いを叶えます。
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第199号