partC

次の日、結局浩志の家に泊めてもらった二人は、
発電所に問い合わせを自宅でしていた。

―へぇ、ってことはこの辺りは全部停電?
―そういうことだ。俺たちの家も多分停電していたんだろう。
―ふうん、まぁ、そんなことよりもこの紙の意味を、
 何とかしないとね。
―いや、それももういい。
―ふぇ?
―もう意味は分かった。



そして、また署のあの部屋で、3人が集められた。
某名は相変わらずメールを打ち込んでいた。
浩志は犯人が分かったというDをみてうれしそうだ。
Dはまず、鑑定に出されて戻ってきた紙を見ていった。

「スマッシュヲタク へ
 スマッシュヤ 須磨ヲコロシ スマッシュナッタ。」

―これを解析するのは簡単だった。
 なぜなら「スマッシュヲタク」を注目すればすぐだ。
 「スマッシュ ヲ タク」と考えれば、

「スマッシュヤ 須磨ヲコロシ スマッシュナッタ。」
「タクヤ 須磨ヲコロシ タクナッタ。」

―つまり「タクヤ 須磨を殺したくなった。」と読めるわけだ。
 と言うことは・・・。
―いや違う!

DX、つまりタクヤは立ち上がって叫んだ。

―僕は須磨さんを殺してなんかいません!

しかし、浩志はそれを罵倒した。

―いい加減あきらめろ!この原稿用紙の一部がそう言っている!
―違う!違う!
―だが、この紙に書いているんだ!あきらめろ!

浩志はその鍛えられた左腕をDXの首に押し当て、
いかつい形相で睨んだ。
するとDは急ににやにやし始めた。
そして、浩志に聞いた。

―ところで、その紙を誰が書いたんですか?浩志さん。

浩志はその手を離して、Dの方を向いた。

―あぁ、これは被害者の手から見つかったんだ。
 須磨の弟がそれを俺に出してきたんだ。
―なるほど。で、誰が書いたんですか?
―いや、それは分からない。ただ、握られていたんだ。
―でも、おかしいんですよね。この文章。
 なんか書き方が須磨さん本人でなくて、
 まるで誰かが書いたかのような感じなんですよ。

Dはおもむろに一つの写真をとりだしてきた。

―これが須磨の刺殺された傷跡です。
 左下斜めからぶれなく心臓に刺さってますね。
 普通、人を刺すときは緊張して、
 下から斜めに差すなんて芸当はプロじゃないと出来ないんです。
 つまりこれは須磨より、170cmより低いことが条件。
 さらに、サウスポー、左利きであることが条件なんですよ。

Dは一人一人言っていた。

―某名さんは175cmで背が高いですね。
 しかも、そのメールを打つ手は右利きだ。
 さらに、携帯の使用は必ず会社のデータに残る。
 それがどうやらあったらしい。だから、彼は犯人ではない。

―棒次さんは、彼の弟ですが、背は高い。
 確かにサウスポーみたいだけど、
 背はどうやら、あなたは180cm以上のようだ。
 あなたでもない。
 それに、結婚が決まっているとなれば、彼を恨む意味もない。
 関係ないかもしれませんがね。

―そして、肝心のDXさんは、背も低く160cmしかない。
 でも、浩志さんの腕を止めようとしたとき、右手が出た。
 部屋にはいるときも右手で携帯を扱っていた。
 つまり、あなたが犯人でもない。
 あくまでこの見方だけ・・・ですがね。

浩志は驚いて、Dの方を向いた。

―おいおい、これじゃあ、犯人は誰なんだ?
 自殺という方向か?
―いや、ただね。
 この3人よりもっと動機も明確で、
 アリバイがない人がいるんですよ。

Dは指を差していった。

―犯人はあなただ。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第258号
ページ番号
3 / 4
この作品について
タイトル
D&H(和田須磨子殺人事件)
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第258号