partD(終)
彼が指さしたのは、
冬木野浩志だった。
―俺?
―そうあなただ。
アリバイもなく、あなたはうそを付いている。
Dはボイスレコーダーで、会話の声がする音を出した。
ジ・・・ジジ・・・
―ふう、まさかこんな近くで夕方に殺人おこったなんてね。
―ビックリですよねー。
―俺ね、あの日もずっと昼から夜までソニックしていたんだよね。
―へぇ、あのGCでですか?
―そ、あ、そうだ。俺のチャオ見てみる?
―あ、良いですねー。
パチッ。
―・・・。
―分かりました?あなたがうそを付く決定的瞬間だ。
あなたはあの日の夕方ソニックをしていると言っている。
しかし、それはうそだ。
なぜなら、あの日はここら辺一体が停電だったからだ。
もちろん、あなたの家も。
―・・・。じゃあ、あの紙はいったい何なんだ?
ジ・・・ジジ・・・。
―いい加減あきらめろ!この原稿用紙の一部がそう言っている!
―違う!違う!
―だが、この紙に書いているんだ!あきらめろ!
パチッ。
―原稿用紙の一部?タクヤさん。
彼の原稿用紙とは一体どんなもので。
タクヤはしどろもどろで答えた。
安心しすぎて、いきなり名前を呼ばれてビックリしたらしい。
―あ、いや、なんか、彼のは普通の白紙を・・・。
―そう。だからこれが原稿用紙なんて分かるはずがない。
紙を使って罪をなすりつけようとして、
文章が書かれた紙の一部を破って持っている犯人以外はね。
―・・・。
―持っているんでしょ?出してくださいよ。
すると、浩志はポケットをまさぐった。
しかし、そこから出てきたのは小型のナイフだった。
須磨を刺したのと同じ型だった。
―な・・・。
―ふっ、そうだ。俺が須磨を殺した。
そして、背の高さと傷跡を認証されると思っていた俺は、
少ししゃがんで下から突き刺したんだよ。
―どうしてそんなことを・・・。
―あいつの最新作には俺の汚職の話があった。
いや、俺のことを知っているのかどうかは分からない。
だが、話の内容は全く重なっていた。
被害者女性に性的暴力を加えた話も、全部同じだった。
怖かった。
俺の人生がぐちゃぐちゃにされるのを俺は怖かったんだ。
浩志はナイフを投げ捨てた。
―あの紙は即興で作った。
まさか、それが命取りになるだなんてね・・・。
でも、あそこのチャオとの会話を何故君は録音しようと?
―いや、ただ何となくだ。
何かあの3人は犯人とは思えなかったからだよ。
そして、浩志さんがひときわタクヤさんをみて、
悲しそうな顔をしていたからさ。
浩志は崩れた。
―本当は優しかったんだ。あなたは。
だから、自分の罪につぶされそうになった。
その矛先がたまたま須磨さんに向いただけ。
偶然なんだよ。全部、偶然・・・。
浩志が逮捕された一週間後。
DとHはいつものぼろアパートで喧嘩をしていた。
―いやだ!あたし某名さんの方に行くからね!
―どうせ人間はすぐにおまえみたいなうるさいチャオは捨てるって!
―でも、こんな汚いアパートに済むのはこりごり!
―でも、頼むよ!明日からの公演のアシスタントに来て欲しいんだ!
―どんな内容?
Dは自信満々にこういった。
―アドレナリンが沢山出ているチャオはどのような行動を起こすか。
Hはハイヒールを思い切りDに投げつけた。
Dはぽよをぐるぐるにしながら、Hに言った。
―捨てられるぞ!絶対に捨てられるからな!
fin