part1・C 「殺伐地帯」
二人はホテルに戻った。
Hはとまどっていた。
なぜならDは真相が分かった瞬間、厳つい顔をして、
拳を握りしめていたからだ。
びくびくしているHをDは一瞬見た。
Dは、あぁ、恐いのか、と考えて、
怒りを抑えて穏やかな声で言った。
「H、これは怪奇現象でも何でもないんだ。」
DはHの耳に口を近づけ、
今回の真相全てを言った。
その瞬間、Hもまた拳を握りしめた。
次の日、二人はある決心をして、
その問題の公園にいた。
そこには近所の人が沢山集まっていた。
近くの警察も工場の社長らしき人も。
Dは携帯でメールを送った後、
その人達に呼びかけた。
「今回の事件は怪奇現象ではないです。」
その言葉を言うと、
全員がぼそぼそと何かを言って、又Dの方を向いた。
「じゃあ、何なんだ?」
誰かがHに訊いた。Hは落ち着いてこういった。
「チャオ殺しです。」
その言葉は集まった人を凍らせた。
Dはにやっとして話し始めた。
「・・・・
そう、あなた達が凍り付くのもしょうがないですね。
なぜなら、完全犯罪がばれたんですものね。
そうでしょ?・・・皆様方。
あなた達人間は汚い、そして醜い。
チャオ達の間でも言われていたけど、
此処までひどいことをするとは、私も驚きですよ。
・・・・。」
「う・・・嘘だ!馬鹿なこと言うな!チャオのくせに!」
誰かが叫んで、全員が怒りの目をDに向ける。
だが、Dは冷静だった。
「・・・・
そう、あなた達はチャオのくせに!とチャオを差別している。
だからこんなことになったんだ。
あなた達は近くにいた悪ガキチャオをいやな目で見ていた。
注意しても無駄だと、誰もが思っていて実際そうだった。
だから、存在自体を消そうと、この犯行を考えた。
だから、いたずらっ子の格好の遊び場だった此処で、
そのコ達を殺害したんだ。
・・・・。」
全員のブーイングが止まった。
まるで、見透かされたかのように。
「・・・・
あなた達は、まず、水場にチャオが入るのを確認して、
その時に、ある粉をまいたんだ。
そう、鉄鋼を保存する、この工業地帯に山ほどある。
・・・生石灰さ。
そう、生石灰は水と激しく反応して、
約300度以上になるらしい。
チャオ、あのいたずらっ子もは当然一瞬にして蒸発する。
ゲームであったような、
一瞬でチャオを跡形もなく消すという残酷なことを、
あなた達は犯したんだ。
工場長は当然生石灰を用意しただろうし、
警察はこれを黙認した。
近所の人もシラを切れば、それで全てが上手く行く。
足跡もないし、痕跡もないんだ。
そして、警察はこれを事故とした。
そうすれば、人間が捜査に出る必要はないし、
出なかったからと言って疑われないだろう。
どうだ?良い推理だろうと思うが?」
この推理に全員反発すると思っていたDは、
黙って聞いている全員に少し違和感を感じた。
だが、此処まで来たらしっかりとケリを付けよう。
「そして、証拠を出してあげよう、これさ。」
Hは袋から昨日いけに落ちていた白い粉を取り出した。
「・・・・
これは消石灰というモノなの。
生石灰と水が反応したら出来るモノなのよ、
これがあるってことは生石灰を使ったって言う証拠なのよ。
ついでに、これを刑事告発すれば、
あなた達まとめて「チャオ法 殺戮罪」で懲役ね。
覚悟しておいた方が良いわよ、ねぇD。
・・・・。」
すると、近所の人は皆一斉に笑い出した。
DはとっさにHを押した。
そこには、白い粉がまかれていた。
「ちっ、おまえら、証拠を・・・。」
DとHはかけだした。
近所の人たちはどんどん追ってくる。
「俺たちを殺して、完全犯罪にする気だな、畜生!」
DとHは細い路地に駆け込んだ。
そして、道沿いにあるくぼみに隠れた。
どうやら見つからなかったらしい。
「はあはあはあ、くっ、どうしようか・・・。」
「此処にいたって見つかるだけだよ・・・。」
Hは泣きそうになっていた。
Dは大丈夫だと、背中をさすった。
そして、Dはふと名案を思いついたのだった。