第3話
国会では、いよいよ与党が提出した動物愛護法改正案が衆議院本会議で採決された。
結果は無所属の議員が与党側に傾き可決。
そして議論の舞台は参議院へと移り、激しい論戦はしばらく収まりそうになかった。
夢を継ぐ者 ~第3話・狂った歯車~
【中払】「お~い、バジル~!?」
4人のチャオが全員行方不明になってしまい、それぞれの家で必死に探しているところに、一通のメールがケータイに届いた。
Sub:チャオが・・・
From:外村
本文:みんなのチャオ、ウチにいるよ(^^;
どうやら、シフォンに会いに来たらしい^^
こういう訳だったのだ。
外村は4人に同じ内容のメールを送った。
20分後。
【倉田】「おじゃましま~す。」
【外村】「悪いね、わざわざ来てもらって。
いや~、しかし驚いたね。
喋れない子を気遣ってオレの家まで来るとは。」
玄関に迎えに出た外村の後ろから、4匹のチャオが出てきた。
4人とも自分のチャオを抱き上げる。
【大柳】「レーナ、探したよ~。」
【レーナ】「シフォンノメンドウミテタチャオ!」
【外村】「多分、毎日遊びに来るだろう。
ただ、道の途中でシフォンのような事になっちゃいけないから、朝ウチに預けて夕方迎えにくればいいんじゃないのかな。」
【吉原】「そうね。
そういえば・・・動物愛護法改正案が衆議院を通過したけど、どう思う?」
吉原はいきなりこの話題を振った。
チャオ研究家で、『プロ』である彼の意見をまだ聞いてなかったのである。
それに父親からも、「絵梨の友達にチャオ研究家がいただろ、今度会った時意見を聞いてみてくれないか」と言われていた。
外村は少し考えた後、
【外村】「玄関でこの話はちょっとアレだから、中で話をしようか。」
と言って、4人を中に入れた。
【外村】「そうだなぁ・・・、『研究者』、という立場からすると、研究に及ぼす影響が気になる。
今はまだどちらの法律も施行されてないのでいわば「無法状態」。
与党の動物愛護法改正案が通った場合、研究は申請さえすれば今のまま続けられる。
しかし野党の民法改正案が可決された場合、人権が適用されるから自由に研究ができなくなる。」
【吉原】「それじゃ与党案を支持するの?」
【外村】「研究者仲間にはそういう人もいるね。ただオレはそうは思わない。
オレの専門はチャオの知能だから、研究すればするほど「チャオに人権を!」って思えてくるね。
これだけ高度な知能を持っているのに、何で人間扱いされないのか不思議だよ。」
【倉田】「研究を犠牲にしてでも?」
【外村】「おいおい、オレは漫画やアニメに出てくるようなカタブツの研究者か?
研究者である以前に人間だよ、みんな。」
【大柳】「で、シフォンはどうなの?」
【外村】「シフォンねぇ・・・ちょっと調べてみたところ、やはり心理状態は人間と同じだ。
ショックで喋れなくなってる。
やはりウララ達が一緒に遊んであげるのが一番だね。」
【中払】「そっかぁ・・・」
【外村】「そうだ、みんなの家で交代で泊めてやるってのはどうだ?
どうもウチじゃあ友達がなかなかできなくて寂しそうだ。」
【吉原】「いいね、それ。んじゃ、誰にする?」
【倉田】「誰にしよっか・・・」
外村は紙と鉛筆を持ってきて、
【外村】「アミダクジでもやったら?」
その結果、大柳→中払→吉原→倉田の順になった。
【外村】「そろそろ夜だね。んじゃ、早速シフォンを頼むよ。」
【大柳】「ええ、大丈夫。レーナ、シフォンを連れてきて。今夜はシフォンと寝ましょう。」
【レーナ】「ハイチャオ!」
帰る4人と5匹を見ながら、彼は小声でこう言った。
【外村】「シフォン・・・通常のチャオの何倍もの知能がある・・・
あの子が喋ったら、それこそ・・・・か。」
続く