~第五十話~
ソニー「・・・・・で、テルの主人は・・・・・悪い奴じゃなかったらしい。」
ナックー「なんでだ?物盗んだりしてたんだろ?20年以上も。」
ソニー「主人は何故、20年間も泥棒をしてたんだと思う?」
シャー「金で遊んでたんじゃないのか?」
シャーがそういうが、ソニーは首を横に振った。
ソニー「奴はその金で・・・・・貧しい国に寄付していたらしい。」
シャー「・・・何故だ?何故罪を犯してまでそんなことをしたんだ?」
ソニーは一言言った。
ソニー「アホみたいだったから。」
ナックー「はぁ?意味分かんねぇぞソニー。」
ソニー「主人は、旅人だった。さまざまな国行ったらしい。普通行かないような国までな。そして見た。この世界の真実を。その国の人々は服も着てない、ろくに飯も食べていない。おまけに病気になったって、治すやつもいない。仕事もろくなもんもなく、稼ぎなんて無いに等しいものだとさ。」
シャー「・・・・・。」
ソニー「やがて、日本に帰ってきてそこで見たものは、多くの食べ残しをするやつら、宝石をジャラジャラつけている奴ら。服を平気で捨てる奴ら。仕事なんか、余るくらいあった。病気も金さえあれば治してもらえる。熱で死んでいる所もあるのに、ここでは0に等しいほど無い。」
ナックー「・・・ひでぇな。」
ソニー「あぁ、だがこれが世界の真実だった。」
ナックー「俺達チャオも・・・・・そんなんなのか?」
シャー「絶対無い・・・とは限らないだろうな。だが、ほとんどのチャオは平等だ。」
ソニー「続きをいうぞ。・・・・・主人はその時決めたんだ。世界を平等の世界にするんだって、そのためにはたくさんの金が必要だって。」
シャー「だから、泥棒になったってわけか。」
ソニー「そうだ。テルが主人とあったのはその時だったらしい。たまたま空を飛んでいたらカラスに襲われて、落ちたところに主人がいたらしい。散歩中にだとさ。」
ナックー「でもそれじゃ、殺される理由としては死刑まではいかないんじゃないか?」
シャー「知らんな。法律の基準など聞いたこともないしな。」
ソニー「奴は嘘をついたんだ。」
ソニーは唐突に言った。
ナックー「どういうことだ?」
ソニー「確かにそのままだと死刑は避けられたかもしれない。・・・・・でも奴は嘘をついた。『その金で、遊んでいました。』だってよ。」
何故主人はこのような行動をしたのか・・・・・。
テルの話は思った以上に深い話だった。
そして俺は・・・・・泣いたんだ。
ナックー「なんでだ!?おかしいだろそれ!?」
ソニーは、ゆっくり立ち上がった。
ソニー「寄付していた・・・・・といったよな?」
シャー「あぁ。」
ソニー「寄付する際に奴は、差出人不明のままで送ったんだ。」
ナックー「どうしてだ?」
ソニー「理由は二つある。一つは、大金を何度も送るとおかしく思われるだろ?だから、差出人不明にしといて誰だか分からなくした。・・・どこのコンピュータで書いたのか分からなくしてな。自分の・・・・・ギンコー?・・・とかなんとかいう、金を預けている場所も分からなくしたらしい。」
シャー「銀行のことだな。確か・・・他人の金を預けている場所に、金を入れることによって寄付できるんじゃなかったか?」
ソニー「そうだそれ!」
ナックー「あってるのかそれ?」
シャー「僕は郵便局って聞いた気もするが・・・。」
ソニー「No!細かいことは気にしない!」
ソニーは、話の続きを始める。
ソニー「そして二つ目は・・・・・目立ちたくなかった。」
シャー「泥棒してることがばれやすくなるためか。」
ソニー「そうでもあるが、そうではなかった。」
ナックー「どうしてだ?」
ソニーは、一回背伸びをして答えた。
ソニー「平等の世界にするには、自分も平等にしなくてはいけない。平和にするには、自分が偉い人だと思わせてはいけない。自分を・・・・・ただ、普通の人間としてみてもらうため、平等にするにはこうしなければいけなかった。」
ナックー「・・・・・・・・。」
ソニー「そして・・・・・・・・・奴は嘘をついた。」
ソニーは静かに結論を言った。