~第四十八話~
夜空は満点の星空だった。
すでにナックー達は目覚め、動けるようにまでなっていた。
ロミー「もとから自分の治癒能力が強かったんでしょ。幻闘術で回復させたらすぐに治っていったわ。」
とロミーは言っていた。
ソニー達は、木の棒と葉っぱを使って焚き火をした。
火はミユキの幻闘術でなんとかなった。
皆、それぞれの休息をとることになった。
ソニーが一人、星を見ているとナックーが近づいてきた。
ナックー「おいソニー、ちょっと聞きたいことがあるんだが。」
ソニー「お前の理解できる範囲だったら答えてやるぜ。」
ナックー「なんだと!?・・・・・まぁ、いいや。」
ナックー「・・・・・テルは何者なんだ?」
ナックーが一呼吸おいて質問したのはこのことだった。
ナックー「あんだけ難しいコンピュータなんかを扱えるんだ。普通のチャオじゃ、いや人間にすらできないはずだぜ?」
ソニーは黙ったままだったが、しばらくして口を開いた。
ソニー「・・・・・泥棒だったんだ。人間がパートナーのな。」
ナックー「!? ちょっと待てソニー!!」
ナックーはソニーに掴みかかった。
ソニーはただナックーを見つめていた。
ナックー「冗談はよせよ!テルがそんなことするわけな・・・ごほッ!ごほッ!」
ナックーは言葉の途中で咳き込み始めた。
ソニー「やっぱり、完全に回復したわけじゃなかったか。無理すんなよ。」
ナックーは咳き込むのをやめると、もう一度ソニーに掴みかかる・・・・・が、また咳き込んでしまった。
ソニー「・・・お前馬鹿か。」
ナックー「うるせえ!!・・・ごほッ!がはッごほッ!」
ソニー「分かった!分かった!ちゃんと話をしてやるから黙ってろ。」
そして、ソニーは話し始めた。
テルのことを。
テルは元々人間と一緒に人間のいる所に住んでたんだ。
結構名をあげていた。大泥棒の主人のところにな。
主人はテルを最初のうちは、ペットの気持ちで買っていたらしい。
テイルスチャオなんて、めったにいないからな。
だが、主人は泥棒を繰り返しているうちにあることをおもいつく。
『テルに知力を与えれば、最高のパートナーになるのではないのか?』と。
実際考えたことがある人はたくさんいたらしい。
チャオが泥棒になれば、小さくて狭い場所にも侵入でき、更に侵入する家の相手に気に入ってもらえば、やすやすと家に侵入できるからなどさまざまな利点があった。
だが、それは不可能に近いことであった。
チャオに人間の知識、並みの人間以上の知識を与えるなんて、そんなの誰が見たって難しい以上のことである。
・・・・・だが、主人は成功させた。
チャオの中でも、天才と呼ばれるほどの存在ができた。
コンピュータの知識だけなら、並みの人間以上の知識を持ったチャオが。
それがテルだった。
テルは、主人が大好きだった。
なんでもこなす主人に憧れていた。
そして主人に知識、戦闘技術を教えてもらい、そして愛情も教えてもらった。
テルは、元々天才だったということが後からあきらかになるが、主人も相当の大泥棒だったのだろう。
そして、二人での泥棒家業が始まった。
テルが隠れながらうまく内部に侵入し、麻酔銃や催眠スプレーで敵を倒し、そしてコンピュータを使い、内部のセキュリティーを全て解除、または停止させる。
そして主人が侵入し、見事に宝石や金目のものがある場所を当て、そしてすばやく二人で退散した。
そんな日々が、3年も続いたらしい。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
ナックー「・・・・・それでどうなってしまったんだ?」
ナックーが、黙ってしまったソニーに聞いた。
ソニー「ある日主人が捕まってしまうのさ。警察という奴らにな。」
ナックー「テルはどうなったんだよ?」
ソニー「・・・・・テルは、主人を助けようとしたんだ。一人でな。」
ソニーは、夜空を見た。
ソニー「だが警察相手じゃ、さすがに無理だった。むしろ、絶望に叩き落すような光景を見たってさ。」
ナックー「どんな光景だ?」
ソニーはしばらく黙り、衝撃の言葉を言った。
ソニー「・・・・・主人が・・・殺される所を見たのさ。」