第六十六話 過去と未来。そして文明。
イレン「大丈夫ですかね・・・彼ら。」
飛空武帝で、暗闇の空を旅たっている中、イレンが呟いた。
ムーン「心配はいらないだろう。」
カイス「何せホワイトがいるからな。あいつは強い。」
ムーン「処で問題は、だ。「Z−E−N−O−N」が復活した今、世界に及ぶ「救う力」の解放に急がなくてはなるまい。」
その言葉に動じるカイス。そもそもカイスは「救う力」の存在意義さえ知らない。
カイス「救う力?」
イレン「はい。正なる力・・・前向きな心に反応し、覚醒する力です。最も、今は封印されてしまっていて、ムーンさんやサン君は無力なのですが・・・」
カイス「正なる力・・・覚醒?覚醒と言ったな?覚醒なんだな?!」
「覚醒」・・・ホワイトたちが自らの心を解放し、光の限度を打ち消す術法だ。
開闢はそれを更に解し、頭上に集結する。破天荒開闢は、その光を分解させ、装甲する。
サン「どうかしたかー?」
カイス「“救う力”・・・奴は言っていた。“救う力”と対を成す力・・・それこそが“悪魔の力”だと。悪魔、ゼノンは“救う力”をものともしないと・・・」
ムーン「だろうな。だが、それがどうか・・・?」
カイス「全世界のチャオたちの力・・・正なる力を集結する・・・するとどうなる?それこそ悪魔は・・・」
ムーン「ものとも・・・ならない?」
イレン「ですけど、救う力そのものが封印されてしまっていては・・・」
そこに、飛空武帝の操縦部屋のドアが急に開いた。同時に入ってきたのは・・・
赤い、DRR。鎧兜を付けたNRR。黒いDPP・・・三匹のチャオ達だ。
ヴァルサ「畜生・・・いきなり飛ばすなよなあ。」
カイス「兄上・・・何故ここに!?」
ダート「隠れて乗り込んだまでだ。それより、救う力は封印できるものかどうか考えてみろ。」
・・・・・・つかの間の沈黙。突然出てきたことに混乱しているものは誰一人いないようだ。
ムーン「無理だな・・・救う力は「心の力」。形ではない。」
デスベルグ「だから、敢えてヴァルハスはこうした。誰かの心に封じ込めてしまおうと。それが誰だか、分かるか?」
カイス「・・・聞かせてくれ。もし私の考えが当っているならば・・・奴の父親は一体・・・」
ヴァルサ「全て話そう。元々、「ラシアロスト」は名前ではなかった。まあ、愛称みたいなものかな。一代目ラシアロスト。そいつが初めて、闇を消し去ったんだ。」
続きは誰も話さないので、少々面倒そうな表情を見せると、ヴァルサが話を続ける。
ヴァルサ「「Z−E−N−O−N」の力は、古代文明を壊滅まで追い込んだ。で、それを封じ込んで滅ぼした・・・筈だった。」
ムーン「・・・それでか。ゼノンは再生するんだな?」
ヴァルサ「ゼノンを倒す方法は一つ。悪魔を上回る強大な力で、消滅させるしか無い。だが・・・」
イレン「ゼノンが・・・チャオ達に影響を与えて、救う力が幻滅していった・・・」
お見事、とでもいうかのように、ヴァルサが笑って頷いた。そして続ける。
ヴァルサ「力は無く・・絶体絶命。そんな時に現れたのが、二代目ラシアロスト。友と・・・ヴァルハスと共に、闇を滅した。」
カイス「ヴァルハスと・・・共に?待て、それではヴァルハスが父親、ということになるのか?」
ヴァルサ「違うな。名前出さんと分からないか。・・・一代目ラシアロスト。名は、ライバース=ザ=パーラリティ。二代目の父親に当る。」
サン「ライバース!?あいつが!?」
ヴァルサ「二代目ラシアロスト。パルス=ザ=ラスト。ホワイトの父親に当るな。二代目の仲間が・・・四匹居たんだ。サーハス=トラバート、綺羅奈火鴬・・ラキナだ。そして、ヴァルハス=ザ=ルド。」
短い間・・・それぞれが自分なりに解釈しているようだ。ヴァルサが始めからなんでこのことを言わなかったのかが一番の疑問だが。
それもふまえて、ヴァルサは長々と話を終わりへ導く。
ヴァルサ「俺は、サーハス=トラバートの孫。サーハスが、ヴァルハスと俺を名づけた。ホワイトは・・・ラキナとパルスの息子だ。」
ダート「そして三代目は、ムーン=ザ=ライバース。ライバースの継承者、といったほうが分かりやすいか。闇の帝王を打ち砕いた。」
デスベルグ「・・・四代目。パルスがその力の大きさに、ゼノンに影響を与えないかと不安を抱いて、生まれて直ぐに過去へ送った子供。」
サン「待てよ!それじゃ、あいつは・・・」
カイス「ホワイトは未来の者・・・?待て。それでは私達はどうなる?」
ムーン「成程・・・今から未来に、ゼノンに世界は覆われてしまう、ということか。それで、過去へタイムスリップ。そして、今、残っている文明の数々が滅び・・・」
イレン「古代文明ではなく、未来文明の遺産・・・」
ヴァルサ「ゼノンの影響を受けた者・・・俺、ムーン、サン、パルスが力を合わせて過去へと旅立たせた。だが、トラブルが生じて、パルスが犠牲に。ホワイトは・・・」
過去へと・・・戻ってきた。
続く