第六十五話 「「最期」」
サン「逃げられたぁ?!」
ホワイト「おう。逃げられた。」
騒ぎから一時間程度経った頃―寺の中では、現在状況の確認と、飛光武帝やらなんやらでもめていた。
イレン「いけませんよ、サン。深追いしては地獄を見ます。それよりも、飛光武帝を取り返す方が先です。」
ムーン「最もな意見だな。さて・・・飛光武帝はどこにあると考えられる?」
ラキナ「んー?なんといったかのう?―そうじゃ、ラートの方では「フェニックス・マウンテン」と呼ばれていたじゃろ。」
「フェニックスマウンテン」・・・直訳すると「不死鳥の山」だが、ソルブーク列島では「不死の山」と呼ばれているのだろう。
ヤル気満々(といっても、只単に活躍したいだけなのだろうが)のサンが、腕を交差させて、気合を入れた。
サン「という訳で、だ。案内しろ。」
ラリマ「ちょっと待って!・・・「フェニックス・マウンテン」は、大昔に封印されて、中に入れない筈ですけど・・・」
ホワイト「名前が長いな・・・F,Mでいいだろ。で、そのF,Mは封印されて入れないってことは、飛光武帝がある確立は―」
ムーン「・・・ある。あるぞ・・・『奴』め・・・とうとう姿を現したらしい。」
ラキナ「行き先は決まったかの?では、早速出発じゃ。」
聞こえる・・・聞こえるぞ、脈動が・・・私の求めている力がここにある。
“悪魔”―太古に封印されたという大悪魔―「Z−E−N−O−N」の力の全てがここに―
不死鳥をも上回る輝きと、龍をも上回る咆哮、一角獣を覆す疾陣―私の前に姿を見せよ―
ムーン「道理で封印が解けているわけだな・・・」
F,Mの中枢・・・大空洞。黒い龍を象った飛空武帝が一機、置いてあるのを除けば、後は普通の場所だ。
が・・・目の前にいる男。彼は違っている。何が違うか。・・・まったくの“別物”なのだ。
赤い服の上には青い逆三角に「V」字を重ねた模様。黒い体、ダーク・ハシリ・ハシリだが、三本ヅノのラインははっきりと黒い。
『ムーン・・・と、その仲間たちのご登場か。一足遅かったらしい。』
カイス「貴様っ・・・ムーン殿!こやつ!」
ラキナ「久しいのう、ラシアロスト。否・・・ヴァルハスと呼んだ方がいいかの?」
ヴァルハス「そうだな・・・そちらのホワイトには、ラシアロストと呼んでもらいたいものだが。」
目つきは至って普通のチャオ。増してや組織のものなどと一目では分からない。だが・・・その服は組織のもの。
その時、大空洞が大揺れに揺れ始めた。
ホワイト「なんだぁ?!」
サン「さっさと乗れ!脱出するぞ!」
ヴァルハス「さあ!目覚めよ!「Z−E−N−O−N」!!」
飛空武帝に乗り込む途中で、ラキナがまだ残っているのを見て、ホワイトは駆け出した。
皆はもう既に乗り込んでいたが、ラリマ姫はホワイトを追っていく。
イレン「あっ・・・ホワイトさん!ラリマさん!」
サン「発進するぜ!掴まれ!」
唸りを上げると、飛空武帝は大空洞から空へと飛び立って行く。空は・・・真っ暗闇に囲まれていた。
ヴァルハス「ほう・・・三匹残ったか・・・」
ラキナ「お前を生かしてはおけん。パルスの仇・・・討たせてもらおうかのう。」
ホワイト「どいてろラキナの婆さん。」
いつもの口調だ。何かがホワイトの闘志を引き立てているように見える。
ヴァルハス「・・・パルスの息子か・・・ということは、ラキナ、貴様の息子でもある、ということかな?」
ラリマ「え!?」
ラキナ「そういうことになろうとも。」
ホワイト「・・・どういうことだよ?俺がどうしたって?」
ヴァルハス「否・・・今の貴様は“悪魔”だったな・・・では・・・試させてもらうぞ、悪魔よ。帝王をも支配したその力、今、解き放つ!」
揺れがひどくなっていく。とてつもない大地震。立っているのも辛いほどだ。
しかし、目の前の「それ」は、もっと酷い。見ているだけでも「気」が伝わってくる圧迫感・・・
ヴァルハス「紹介しよう。組織、ヴルグの統領、ヴァルハス=ザ=ルド。そしてその下僕、太古の悪魔だ。」
ラキナ「下がっておれ、ホワイト!」
ホワイト「なあ、どういうことだよ!!」
続く