第六十四話 Z−E−N−O−・・・
金属音が響き渡る中で、ホワイトの意識は段々と薄れていった。
まるで自分の体ではないように、体が動く。一体・・・何が起こっているのだろうか・・・
「どうしたぁ?!鈍いぜ!」
ホワイト「うるせーよ!」
くるくると剣を回転させると、その勢いで「そのチャオ」を斬りつけた、が、容易に受け止められ、弾かれる。
「見せてやるよ―これが本当の、光儀刀の扱いってもんだ!」
ホワイト「光が・・・一つに・・・!?」
剣を逆手に持ち変えると、「そのチャオ」は刃の中心に黒い光を充め続けた。
「エクリプス・フレア!」
黒い光は拡散し、周囲から渦を巻いて、ホワイトを中心に、爆炎を起こした。
青い光と白い光―両方が自分の中で、思いの中で渦を成している・・・否・・・もう一つ・・・ある。
黒い光―それも、真っ黒。漆黒というのだろうか・・・そんな色をした光が、思いの断片にある。
「耐えた・・・だあ?」
ホワイト「一々うるせー奴だな・・・俺がこれくらいでやられっかよ・・・!行くぜ、月儀斬!」
青い光が光儀刀に重なってゆく。名を叫ぶと共に、『覚醒』、『開闢』と二連続で解放した。
頭上には青い光の球体―それさえも解放され、「ポヨ」は完全に無くなった。
「破天荒開闢(はてんこう かいびゃく)かあ。さあ、来な!」
ホワイト「正・・・・儀!閨・・・破ぁぁぁ!」
思いのままに剣を振り上げ、振り下ろした。青い光の雹が散り散りに飛んでいき、放たれたのだ。
―処が、雹は「そのチャオ」の剣一振りで砕け散り、黒い雹と化してしまうと、ホワイトに向けて放たれた。
ホワイト「う・・・ああああああ!!」
「正儀閨破―返っ!し!」
キン!キン!キン!―三回、金属の音がすると、ホワイトはひざま付き、屈みこんだが、意識は取り留めた。
「・・・何しやがった?」
ホワイト「―月儀斬―」
一瞬で、そのチャオは吹き飛び、剣を弾かれてしまう。呟きが脅威に変わった。
黒い光が集結されて、東洋風の、黒銀色の剣が作り出されると、ホワイトは再び呟く。
ホワイト「銀雪(ぎんせつ)―」
「くそっ!」
やっと、ホワイトは動き出した。二本の剣を巧みに操り、黒い模様のチャオを追い詰めていく。
「エクリプス・フレア!」
反撃に応じた黒い模様のチャオが、爆風を繰り出すが、剣の一振りでかき消され、無駄に終えた。
ホワイト「終わりにしよう。我が力の前では、お前こそ無力。」
「ざけんな・・・お前のその「悪魔」が・・・目覚めるのが狙いさあ!」
ホワイト「我こそが悪魔―ゼノ
急に電撃が奔った様な感覚に陥った。ホワイトは頭を抱えて、倒れこみ、すぐ起き上がる。
ホワイト「悪ぃな・・・狙い通りにいかなくてよ!」
「あ・・・あ・・・バカ言え・・・悪魔を打ち破った・・・?」
ホワイト「さーて、来いよ!俺の中の、最強の力で粉砕するぜ!」
「・・・・・・ち・・・仕切りなおしか・・・まあいいや。もう一発、粉砕できるかな?」
光儀刀は黒く染まり、中心部にどんどん黒い光が集結されていく。ホワイトは二本の剣を重ねて、青い光と白い光を混ぜるようにイメージした。
「エクリプス―フレアー!」
爆炎が広がり、ホワイトの周囲は黒い炎に包み込まれた。だが、ホワイトからは、物凄い気迫と、エネルギーが沸き起こる。
ホワイト「だああああ!」
爆炎は切り裂かれ、弾き飛び、渦となって跳ね返されると、そのまま霧となる。
「なっ!?」
“我に 逆らうか・・・その先に得るものは 何があろうというのだ?”
ホワイト「俺の体を、勝手に使うんじゃ、ねえよ!!」
突然消えた光儀刀が、一瞬で黒い模様のチャオの懐に入ったホワイトの左手に、霧ごと集まっていく。
輝きに増す輝き―それらが全て集まりきった時、巨大な爆音が響き、黒い模様のチャオは倒れこんでいた。
ホワイト「・・・やったよな?」
「く・・・くくくくく・・・」
不気味な笑いを浮かべて、黒い模様のチャオは起き上がってくる。
―初めて気付いたのは、そのときだ。このチャオ・・・見たことがある。いた。いたのだ。
ホワイト「お前ぇ・・・お前は・・・俺の「中」に居た・・・」
「くくくくく・・・面白い・・・面白くてたまらんなあ・・・俺が手加減してるということに気付かないのか?」
ホワイト「て・・・手加減?!」
「冥土の土産に教えといてやる。俺様の名前はな―」
ブワッと弾けるように、飛び上がった―黒い光がゆったりと流れ出て、周囲を包み込む。
イドラ「「ゼノン改造計画No,11」―鉄心のイドラだ!」
ホワイト「くそっ―野郎!」
すると、ホワイトの目の前に突然、青い光が盾になり、イドラを閉じ込め、直に消えていく。
慌てふためいて後ろを振り向くと、そこにはラリマ姫の姿があった。
ラリマ「ホワイト!無事?!」
ホワイト「ああ・・・大丈夫だ・・・で、なんでお前がここに?」
ラリマ「逃げようと思ったんだけどね、飛光武帝が・・・盗られちゃってて。」
続く