第六十二話 ソルブーク列島へと
見慣れた、住み慣れたこのガーランド大国。今では崩れ落ち、焼き払った街に、別れを告げる。
現実・・・記憶を取り戻してから戻り、すんでいたのはほんの数日かもしれない。
それでも、過去に住み、親しんだ土地は、矢張り名残惜しい。
サン「そろそろ行くぜ。」
ホワイト「あ、ああ・・・何で行くんだよ?つーかホルブーツ列島ってどこ?」
ムーン「「ソルブーク」列島だ。因みに場所は、ここ、ラート大陸の中心部を囲む中、三大大国、セント・ラートを横切っていった後の、島国だ。」
そういわれても・・・という表情を浮かべていると、あきれた表情で返されたため、ムッとした。
ムーン「行く方法?決まっているじゃないか。こいつで行く。」
残骸の中を指すムーン。確かここは、飛行場。地下には・・・・・・
ホワイト「で、でもよー・・・操縦出来る奴が・・・第一、地下に続く階段はぶっこわれちまってるし。」
ムーン「心配いらん。下がっていろ。」
左手を上に挙げ、振りかぶる。瞬間的に、眩い光が見えたと思うと、同時に圧力がかかった。
体中に電流が奔る様な感覚・・・まさにその通りだ。ムーンの左手から紫色の電流が音を立てて、迸る。
その左手を素早く地面に向け、残骸の中へ突き刺した。残骸は何も出さずに消え去り、深い穴が残っていた。
サン「ひゅー♪さすがだなあ。「電気分解」だろ?」
ムーン「くだらん戯言は兎も角だ。ホワイト、操縦は任せた。」
ホワイト「OK!!―って、ええ!?」
ついノリで返事を返してしまう癖は、直したほうが得だ。このとき、ホワイトは痛感した。
ムーン「・・・ここが最深部か・・・伝記によれば、大海に沈んでいた巨大な飛空船。名づけられた名は「飛空武帝」。最も、世間体だが。」
ホワイト「ムーンが使う言葉って難くて分かんねえんだよな。」
サン「よーするに、海に沈んでたのを引き揚げた船で、ん~・・・俺らの「名づけられた名」が「チャオ」なら、世間体。俺はその中の、「サン」ってわけだ。」
なるほど・・・つまりは、科学上の名称が「飛空武帝」であり、その種類名は決まっていないということらしい。
暗闇の中で目が慣れてくると、急に光が目に入ってきた。突然だったので目がくらむ。
ムーン「飛空武帝・・・か。」
表現しようの無い飛行船だ。「機械仕掛けの飛空船」とでもいえばいいのだろうか。
龍の形を象っているようで、色は黒く、白い模様がついている。両翼が「帆」の役割をしているようだ。
ホワイト「かっけぇ・・・」
サン「とっとと乗るぜ乗るぜ乗るぜ乗るぜ!!」
子供のようにはしゃぎながら、「飛空武帝」に走っていく。それに続いて、ムーンとホワイトも走る。
大地震が起こったように、大国の地面が裂けてゆく。「眼」が輝き、暗闇を照らし、空を明るくさせた。
機械音は龍の咆哮。広げた両翼はその証。物凄い勢いで地下から出ると、上空に浮かび上がる。
ホワイト「なんか出来たぜ・・・俺って才能バリバリ?」
ムーン「意味が分からない。才能「ばりばり」というのは何だ?」
ホワイト「待つことを知らない馬鹿者は足をすくわれる、だろ?質問するなよ!喋るなよ!・・・飛ばすぜ!」
先程までの嫌悪感はどこにいったやら、ホワイトは操縦席に座って、目の前のレバーを引く。
黒雲に覆われた地上を空から眺め、そこに世界地図がホログラムで写された。
南西に見える大陸は最初の大陸。中心にそびえるのはラート大陸。そして、その東。
どこかで見たような(というよりも全員知っていることだろう)形の列島。最北端の島は三角形に近い。
その南。つまり、島国の中心地に赤い点が示され、飛行ルートが描かれた。
サン「久し振りの空だな・・・何年ぶりだ?二年か?」
ムーン「六年だ。さて、出発と行こうか。」
ホワイト「・・・処でスピードアップはどうやって?」
ソルブーク列島―首都―「王都」
広々とした木造建築の寺。随分と広すぎる。
その中に、ラリマ姫とカイス、そしてイレンがいた。どうやら、ラキナがこの国の・・・
ラリマ「ああ・・・ホワイトたち、大丈夫かしら・・・」
そわそわしているラリマ姫。畳の上で歩き回っている。イレンは大人しく座っているが。
カイス「あいつのことだ。大丈夫に決まっている。」
イレン「どうでしょうねぇ?別の意味で大丈夫じゃなさそうですけど。」
ラリマ「別の意味?」
ゴゴゴゴゴゴ、という地鳴り。「ちぃ、何だあれは!?」と、どこかで声がする。
外に出て、空を見上げる。そこには、いや、遠くに見えるのは、黒い龍?・・・いや違う。あれは・・・
ラキナ「飛空武帝じゃな!」
赤い振袖を羽織ったラキナが、走りながら叫んだ。兵隊(といっても昔の武士のような)たちをさげる。
ラキナ「阿呆共!ここにそんな広い土地があるわけなかろうがあ!・・・と普通なら言ったじゃろうな。おい、奴らを案内してやれ。」
続く