第五十九話 白
“全て・・・取り戻したはずなのに・・・”
彼は思う。何故勝てない?何故守れない?何故・・・いつもいつも、負ける?
“今の俺じゃ・・・駄目なのか?変わらなきゃ・・・いけないのか?”
彼は悩む。自分は今のままではいけないのか。自分は変わらなければならないのか。
“あいつは俺を・・・悪魔って言った。悪魔・・・?悪魔って何だ?”
―『・・・り 戻 ・・・せ・・・・・・』
彼の脳裏に声が響く。聞いたことの無い声。身がよだつような、恐ろしい声。
―『取り戻せ・・・お前の信念を・・・』
“信念?俺にゃ、信念なんて無ぇ・・・記憶も曖昧だ・・・俺は・・・何なんだよ・・・”
―『失った モノを・・・取り戻せ・・・』
「ふん。俺の敵ではなかったか・・・」
『だろな。その杖は天下無敵。誰でも使える。誰でも強くなれる。さあ、返してもらうぜ。デライツ!』
名を呼ばれたデライツは、慌てて振り向く。氷と化した地面を一瞬で溶かし、空にさす光を我が力とする。
赤く輝く身体は、日の光を受けて、途方に輝きを増す。目には自信、握り締めた拳には信念。
デライツ「・・・サン=オブ=フレイアム・・・アナザー・カオスか・・・本来、この世にいてはならない存在。」
サン「へっ!紹介ありがとさん!ほんじゃまいっちょ、行きますか!」
拳からは、赤く光る、否・・・あれは光ではない。「炎」だ。炎が右手から吹きだす。
それが渦を巻いて、長い棒のようになると、形が整い、剣へと象る。
サン「サン=オブ=フレイアム!技名は「インフェルノ=ライトニング」!目的は「エンシェント・ロッド」奪還!」
デライツ「出来たらいいがな!相手になろう、アナザーカオス!」
ホワイト「ここは・・・どこスか?」
森の中だ。分かることはそれだけ。葉の隙間から日光が射す。
―『デスティニーズ ストリーム・・・運命の渦の、中だ。』
前へ前へと進んでいくと、次第に明るい城が見えてきた。これは、ガーランド大国・・・
その草原。確か名前は・・・
「ホワイト!」
ホワイト「あれは・・・ラリマか?んで、あいつは・・・俺ぇ?!」
―『運命の渦。運命が変化すべし時を写す。つまりは過去だ。』
幼いラリマ姫が、このときのホワイトに近付いていく。笑い飛ばしながら、ホワイトはラリマ姫の頭をなでた。
ホワイト「そっか・・・これは・・・過去・・・」
ゾルグ「気をつけて・・・行って来い。」
「ああ。任せとけ。行くぜ、ダート!デスベルグ!」
ダート「すまんな・・・」
空中要塞に突入した時だ。・・・恐らく。記憶の中ではだが。
初めて入ったときは・・・・・そりゃ迷ったさ。だって、相手の状況も何も分からなかったし。
で、ダートとデスベルグが裏切って、俺だけ逃がして(とてもあいつらと戦って勝てないんでね)・・・
・・・・・・ちょっと待てよ・・・・・・確か、この後・・・
「戦いに背きし者よ・・・僕は漆黒の大剣、ミッドナイトの所持者・・・罪を償い、苦しむがいい・・・」
「待ってくれ!なんでだ!?」
「そのミッドナイトは、戦いの剣・・・少しでも闘争心を欠けば、持ち主の心を喰らう。そうなれば「闇」の思う壺・・・お前は身を隠せ。」
ホワイト「この後・・・どうなった?自分では・・・記憶と力の分離・・・だった。・・・でも、こっから覚えてねえ・・・」
―『真実を見たな』
続く