第五十八話 全ては時と氷の中へ
イレン「行ってしまいましたね。さ、私達はどうします?行きますか?」
ラキナ「よろしかろう。此処は危険じゃ。退くぞ。良いな、ラリマ?」
怯えた様子を見せると、こくんと自身なさげに頷くラリマ姫。遂に、城からは誰も居なくなった。
「ふふ・・・楽しいな、ゾルグ。懐かしい。だが、弱くなったようだな。」
暗闇の中でも、人一倍黒く輝いている何かが、ゾルグの前に立ちふさがる。
ゾルグは傷つき、歯を食いしばっている。どうやら、とてつもなく強い敵・・・のようだ。
ゾルグ「そうか?・・・まだまだ現役だと思うが?」
「なら、補欠に落としてやろう。いや・・・地獄だな!」
右手を挙げたのかも、左手を挙げたのかも、何をしたのかすら分からない速さで、ゾルグは吹き飛んだ。
処が、途中で受け止められ、着地する。そこには、ホワイトたちの姿が見えた。
ヒーズ「来てやったぞ、父親。」
ホワイト「うわぁ!なんだこりゃあ!地面が氷みてーになってるぜ?」
今にも割れそうな感触が残る、透き通る氷のようなものに、月が反射して写っている。
「ふ、四対一・・・いや、五対一。丁度いい。試させてもらうぞ、「M」。」
ブレスト「・・・勝てる気がしないな。貴様・・・生気が無い。いや、動いている気配さえない。」
アヴェン「何・・・だと・・・生気が無い?―!逃げろ!」
何かに気付いたのか、アヴェンが急に叫んだ。大きな爆音に続いて、地面が割れ、氷の絶壁に落ちていく。
何とかホワイトは岩に掴まり、よじ登る。
ホワイト「ちっ・・・てめ・・・俺が相手になってやるぜ。」
飛び上がる寸前、何かに貫かれ、ホワイトは空中に静止する。胸の辺りが黒ずんでいき、苦しんでいるようだ。
「どうやら、奴は余程、お前が邪魔ならしい。この杖の代わりに邪魔な者を消してやろう、「M」。」
ホワイト「消す・・・?へ・・・なめんじゃ―ねえ!」
青い光が逆流し、周囲に飛び散った。同時に、暗闇の生物も巻き込み、爆破する。
全ては、氷の中へ、消えていった。
続く