第五十六話 はろー!諸君!
ラリマ「光術士?」
カイス「ホワイトの様な、光を扱う戦士のことを指すのだ。」
質問に答えていない、といった顔で睨むので、麦藁帽子のチャオは困った表情で苦笑した。
左手を差し出して、にっこりと笑いながら、そのチャオは言った。
イレン「イレン=ド=テアハニィ=ジェル、と申します。」
簡単に握手を返しながら、ホワイトは一所懸命思い出している様子だ。何かを。
突拍子に思い出したのか、右手でイレンを指差し、あーっ、と叫んだ。
ホワイト「国家の軍事管理者!えーっと、確か医療術で有名な光術士で・・・少佐、だったな!」
イレン「覚えていてくれましたか。カイスさんも、御久し振りです。」
カイス「うむ。何分変わらぬ様子だな、イレン殿も。何故ここへ?」
イレン「実は、組織―」
『はろー、諸君!ちゃんと聞こえているかな?うんうん、おっけー!』
突如鳴り響きだした声は、家中に鳴っているようだが、聞き覚えが全く無いのが事実だ。
『えー、コホン。私は組織、朗々四天(ろうろうしてん)の一人。今回、ラート大陸の三国より、ガーランドを滅ぼす計画を実施します。』
ラリマ姫「え?ちょっ・・・どういうこと?」
『四国となる筈だったんだけども、セント・ラートが拒否しやがったから・・・とま、置いといて。そこでホワイト君!先程の』
ホワイト「断る!!」
何が何でも断るつもりらしい。例えどんなことだろうと、組織のものとは話すに値しない、ということだろうか。
それよりも、朗々四天というものが気になったカイスは、そのことを聞こうとしたが、組織の声が始まった。
『・・・ま、いーや。なら、お前ら殲滅ね。さいなら~♪』
ヴァルサ「どうやら、組織の奴等が攻めて来るらしくて。身の程をしら―」
イレン「皆さん、伏せていてくださいね。」
どこから組織のものが来るかも分からないのに、イレンは剣を抜いて、その刃を輝かせた。
麦藁帽子を左手で押さえて、右手の剣を前にあげた。すると、目を瞑り、剣を上に上げる。
天窓から落ちてくる組織のものは、一瞬にして灰と化してしまう。それも、全員。
イレン「・・・ふう。」
ホワイト「すっげえ・・・何したんだ?」
イレン「あ、僕のこの「聖霊剣」は「闇」の力を浄化するんです。ただ、恐らく体ごと消えてしまった、ということは、組織の兵は闇そのもの・・・」
アヴェン「とっとと行くぞ!国がやばい!」
何故かは分からないが、イレンも「同行する」といって、飛行船に乗り込み、ヴァルサらに別れを告げた。
飛行船は速度を上げて、ガーランド大国へ向かい、夕暮れの空を駆けていく。
ガルフ「ほう・・・だが、国にはルドがいるから大丈夫だろう?」
アヴェン「ルドの野郎は信用ならねーからな。」
ラリマ「・・・お父様・・・」
あっという間に大きな城が見えてきた。太陽は既に沈みかかっており、空は半分紫色に近い。
飛行場に着陸すると、急いで城へ向かう。このことを早く、王に伝えなければ、大変な事態になるからだ。
ゾルグ「ふむ。そうか。セント・ラート国が味方してくれるとは、良い味方となる。」
「長い付き合いじゃろ?そう固くならんでよい。」
ガーランド大国、王座の間。ゾルグ王と、真っ赤なニュートラル・オヨギのチャオが、対談している。
どたばたと騒がしくなってきたと思い、ゾルグは目を細めるが、赤いチャオはにやりと笑った。
ラリマ「お父様!」
続く