第五十五話 最後の剣を制すのは
ホワイト「やべっ」
青い光の壁を右手に集結させると、左手からも青い光を生み出して、「覚醒」と叫んだ。
体の内から発せられる青い光が、強烈にこみ上げてくる。ヴァルサは光の矢に当らずに、床に着地した。
ヴァルサ「解放せよ、「炎縛」!」(えんばく)
ホワイト「「月儀斬」!」(げつぎざん)
青い光が、両手同時に二本の剣の形へと象り、実体化する。
向かってくる炎の弾丸を、両手の剣で防ぎ、弾くと、ヴァルサはホワイトの背後にいた。
ヴァルサ「二つ目だ―「氷縛」!」(ひょうばく)
右手に炎の「炎縛」、左手に氷の「氷縛」をもち、ホワイトに突き刺す。が、上手く振り向いて、剣を二本の光儀刀でおさえつけた。
ホワイト「へっ・・・捕まえたぜっ!」
ヴァルサ「ちっ・・・しくじったか・・・」
ホワイト「錬成ッ!」
青い光を薄く広げ、床から実体化させた幾つもの剣で、ヴァルサを押さえつけた。その隙に、ホワイトは後ろへ下がる。
二本の光儀刀を光に戻し、ホワイトは左腕に右手を当てて、微笑した。
ホワイト「さーて、アヴェンから頂いた皚皚石の力とやらを、拝めようぜ、ヴァルサ!」
ヴァルサ「残念だが、俺にもお前のような光が使えるものでね。拝むわけにいかないんだ。」
ホワイト「・・・は?」
三本目の剣を、右手にはさんで、ゆっくりと抜く。まずいと思ったのか、ホワイトは白いローブを脱ぎ捨て、その中から白く光る石を取り出した。
左手に持ち、高く掲げて、青い光を生み出すが、既に時遅し。ヴァルサは脱け出してしまう。
ヴァルサ「三刀流―剣術―「鋼縛」だ。」
その剣は、ほとんど鉄の塊といってもいいほどだったが、ホワイトは残念な表情を浮かべている。
ホワイト「畜生!ま、これで互角かな。開闢!」
皚皚石の白い光が増し、青い光と絡め合い、左手に強大な青い光が生み出された。頭上には、青い光となる球体。
同時に、ヴァルサの三つ目の剣、「鋼縛」(こうばく)は姿を変えて、半円を描くような刃になった。そして、四つ目の剣に左手を掛ける。
ヒーズ「ほう・・・ホワイトの実力も上がっているな。」
カイス「兄上が「四刀流」を見せるのは、これが三度目だな・・・」
ヒーズ「三度目?」
カイス「一度目は私が組織のもの数十匹に襲われていたとき。二度目は、兄上が戦友と戦っていた時だ。恐ろしく強いぞ。」
目の様子を変えて、ホワイトは青い光を剣と化した。白い光が薄っすらと見えている。
四本目の剣を抜き終えると、体中に電撃が奔るような感覚が残った。
アヴェン「確か、あの紫に帯びた刃は・・・雷縛、か?」
カイス「そうだ。電撃を操り、身に受けさせた者を麻痺させるという、雷の剣。名を・・・」
ヴァルサ「「雷縛」!」(らいばく)
微笑しながら、そう叫ぶと、ヴァルサは四本の剣を高く上げて、一つに重ねあわせた。
ラリマ「あの・・・ホワイトは何をしようとしているんでしょう?」
カイス「さあ・・・兄上の四刀流最終形態に立ち向かえる技術があいつにあると思えんが。」
ヒーズ「アヴェン。確か皚皚石は、南無三宝の一つだったな?だとすれば、紅蓮石に引けを取らない力を持っている筈・・・まさか・・・」
突然目の前に黄色い光が当り、視界が遮られてしまう。おいおい家は大丈夫なのかと心配しているのはスパラだけだ。
しかし、片方からは更に白い光が、青い光を覆い尽くし、溢れて見えてくる。光がやむと、そこには一変した姿があった。
ヴァルサは黄色く輝いた一本の剣を右手に持つ。柄は真紅で、鍔は黄金だが、柄のところまで伸びて、持ち易くなっている。刃は光そのものだ。
ホワイトは、白く輝いた、銀白色の剣を左手に持つ。柄は銀色、鍔も銀色、刃も銀色の三色一体、東洋風の光儀刀だ。
ヴァルサ「全てを終わりへと導く剣―「終縛」だ!」
ホワイト「そうかい。俺のはだな、「破天荒開闢」に因んだ月儀斬の姿だ。名づけて!」
両者共に、一斉に壁に吹き飛び、叩きつけられた。大分いらだった空気が流れている。
ニュートラル・オヨギの、ピュアチャオ、ビィレと、黄色いが、光沢のある、麦藁帽子を被ったチャオがいる。
どうやら、麦藁帽子のチャオが吹き飛ばしたようで、右手に一本の鋭い剣を持っている。
スパラ「ふー・・・帰ってきてくれて良かったよ。俺じゃー止められなくてね。怖くて。」
すっかり元通りとなった大広間。大きな長いテーブルが用意されて、食べ物を食い荒らすホワイト。
ヴァルサ「処で・・・なんで止めたんだ?」
「邪魔ですから。」
麦藁帽子のチャオは、あっさりと言い切った。と、食べ荒しの終わったホワイトに近付いて、笑いかけた。
近くにはヒーズとアヴェン、それにカイスとラリマ姫もいる。
ホワイト「で、あんた何もんだ?」
「こうして目を合わせてお会いするのは初めてですね。ホワイト=ザ=ラシアロスト、ラート大陸専門国家認定の光術士だと聞いておりますが。」
続く