第五十四話 白と赤。兄上と元将軍の対決
昨日とは一変して、黒いマントに身をつつまず、赤い端切れを背にまとって、ゾルグは言った。
ヒーズ「しかし突然何だ?ヴァルサの家にいくとかいいだして・・・」
ホワイト「うるせぇ。この所、全然勝ってないからよ、まーたあいつに手合わせ願うのは癪だけど・・・それに」
白いローブを着ると、顔をしかめながら、ホワイトが乱暴に言いかけた。
どうやら、船でヴァルサの家まで行くらしい。「船」とはいっても、空を飛ぶ船、所謂「飛行船」だが。
ラリマ「私も行かせてっ!」
ガタンッと扉を開けて、ラリマ姫が同時に叫んだ。今、この場に居るのは、ゾルグとホワイト、ヒーズだけだったが、ラリマ姫が入ってきた。
それに対応して、カイスとアヴェンがやって来る。こっそり城を脱け出すには、大まかすぎたのだろう。
ホワイト「で、結局、全員出動かよ。」
空を飛ぶ船は、ほとんど船に両翼をつけたようだった。動力が違ったり、帆の角度やらが違うのだろうが、いまいち変わらない。
カイス「処でホワイト様。何故兄上の所へ?」
ホワイト「普通に喋れ。どーも気に喰わん。いや、普通か・・・ま、とりあえず丁寧語はやめろ。」
カイス「分かりまし・・・分かったが、何故だ?」
ホワイト「手合わせする為。それに、俺の記憶の「途切れ」をあいつに教わる為だ。」
その時、「記憶の途切れ」という意味がよく分からなかったが、深く聞く前に、ホワイトはどこかへ行ってしまった。
甲板を出て、船内に入ると、見慣れないチャオが一匹、そこにいた。
ニュートラル・ハシリ・ハシリの、黒いチャオ。右手には、焼印がついている。ガルフ=ケルビムだ。
ホワイト「おう。ガルフ、どうしたんだ?」
ガルフ「どうしたもなにも・・・気付いていないのか?奴等の気配に?」
ホワイト「気付いてるぜ。でも、今は動かないだろ。五帝を倒されて痛手を負ってるだろうしな。」
それでも尚、不安な表情を見せるガルフの前から、慌てて逃げ出すように去っていくホワイト。
居場所がなくなり、マストの上にのぼり、日光を腕で遮る。次第に大きな家が見えてきた。
アルビーク・トレインズの、ヴァルサがいる家だ。
アヴェン「そろそろ着くみたいだな。」
ホワイト「あ、あ?・・・アヴェン!?いつの間に?!」
アヴェン「さっきからいたじゃないか。それより、さっさと降りる準備しろ。」
「ヴァルサぁ、さっきから変な音がするんだけども。」
ヴァルサ「知っている。それよかスパラ、戦いの準備をしておいた方が良さそうだ。」
家の大広間で、四本の刀を腰に装着し、にやりと笑いながら、ヴァルサは言った。
次第にその音は大きくなり、やがてガラスの割れる音へと変化する。そして、怒鳴り声。
天窓が割れるが、すぐ直り、上から何かが降りてきた。スパラは端に避けて、ヴァルサは身動き一つとらずに、苦笑している。
ヴァルサ「記憶は戻ったらしいな。俺に用か?」
ホワイト「俺の記憶に途切れがあるんでね。教えてもらおうと思って。」
ヴァルサ「いいだろう。俺に勝てたらの話だが。開始の合図は、扉の壊れる音で―」
まるで爆発が起こったように、扉は吹き飛び、壁にぶつかった。血相を変えたカイスが奔って入ってくるが、途中で止まる。
同時に、ラリマ姫、アヴェン、ヒーズと、順に入ってきた。
ホワイトとヴァルサの姿は、既に大広間には無い・・・いや、あるが、見えない。
初めて目に入ったのは・・・・・・青い光がヴァルサの足によって蹴り飛ばされるところだった。
ヴァルサ「俺を四刀流だと知っているはずだが?」
ホワイト「当ったり前だろ!」
右手から生み出された青い光が、二階の壁に足を乗せるホワイトから放たれた。
壁によりかかっているヴァルサは、左手に黄色い光を宿すと、青い光を防ぎ、相殺させる。
カイス「何が起こってる・・・?」
アヴェン「戦ってるんだ。あいつらが。」
大広間の床に青い光を放ち、広範囲に薄く広げられると、ヴァルサはそれから逃げるように飛び上がる。
天井にかすりながら、大振りに四本中の一本の刀を抜くと、天井に少しながらも傷がついた。
薄く広がった青い光の上に立つと、ホワイトはその青い光を縦に薄くして、壁とした。
ホワイト「ブルーライト・エネルギー!」
壁から、いくつもの青い光が、矢となって放たれた。処が、ヴァルサはその矢に向けて、横にとんだ。
ヴァルサ「炎を司る刀・・・分かるな?」
続く